原作、幼馴染パロ
「なんかさー、可愛げがなくなったわよね」
「唐突に失礼だな」
木の葉隠れの里にて、有名でお洒落なカフェテラス。
向かい合って座る男女はカップルか。
ひそりひそりと話す周りの声なぞ気にせずに、頬杖を付いたままストローを歯で噛んだ。
「だってさー、我愛羅くん小さい頃はあーんなに可愛かったのに!
サクラちゃん、サクラちゃん! って私の後着いてまわってたのにさ!
今では見る影も無いわー……ショックよ」
ずーっとストローで紅茶を飲めば、サクラの向かいに座っていた我愛羅がすっと腕を伸ばし
サクラの広いデコに向かってピシ! とデコピンをする。
「あだ!」
「お前は相変わらず失礼なヤツだな」
「だってー……風影就任おめでとう」
「ありがとう」
軽快な応酬。
また、ひそりひそりと言葉が聞こえる。
「我愛羅くんも有名人になっちゃって……」
「風影だからな」
グラスに口を付け、ゴクリと珈琲を飲む我愛羅を一瞥し、サクラはへたりと頬をテーブルにつける。
「ナルトもサスケくんも有名になっちゃって……なーんか皆手の届かない人になっていく感じよねー」
テーブルにつけた頬をぐりぐりとしながら、瞼を閉じるサクラを見下ろした我愛羅はコースターに静かにグラスを置いた。
すっと伸ばした手がサクラの頬をやわりと触り、流れ落ちていた薄紅色の髪の毛を耳に掛ける。
「お前は変わらずに居てくれ」
「えー、何よそれ」
我愛羅の言葉に頬を膨らませたサクラに、我愛羅は優しく視線を落とす。
「あのさあ……そういう事するから間違われるんじゃない?」
「なにがだ」
ガバリと顔を上げたサクラに触れていた手を離した我愛羅は怪訝な表情を見せた。
「そういう事! 我愛羅くんが帰った後がすっごい大変なんだからね! いつも!」
「ほう」
ぐっと握り拳を作るサクラ。
それを見て我愛羅は小さく笑う。
「どういう関係なのかとか、根掘り葉掘り聞かれるし! と言うか付き合っているとか噂が凄いんだから! どれだけ弁解しているか……!」
「なるほど」
ふむ、と納得した我愛羅はもう一度腕を伸ばしてサクラの肌触りのいい頬に触れる。
影が落ちたサクラは少しだけ瞼を見開き、我愛羅の柔らかい瞳を見る。
「だったらその噂を本当にしてしまえばいいだけではないか」
ちゅっと聞こえた音。
瞬きを繰り返すサクラからゆったりとした動作で我愛羅は離れる。
二人のやり取りを遠目から見ていたサクラの後輩やら木の葉の忍達がキャー! と黄色い歓声を上げた。
「なっ、ん、……なんて事すんのよ!!」
バッと右手で頬を押さえたサクラは、まるでそこから全身に熱が広がる感覚に陥った。
「さて、そろそろ帰るかな」
よいしょ、と腰を上げ"風"と書いている笠を我愛羅は頭に被る。
ああ、そうだ。と振り向いた我愛羅は無表情でサクラに告げた。
「次来る時は、サクラ。お前も一緒に砂に連れて帰るからな」
「帰れ! さっさと帰れ!」
顔を真っ赤にしながら、我愛羅に向かってもう一度「帰れ!!」と叫んだサクラの周りには顔なじみの女性陣が群がっていた。
意気揚々と立ち去った我愛羅とは裏腹に、これから質問攻めに合うであろうこの状況をどうしようかと、
頭を悩ませるサクラがカフェテラスの前に居た。
2015.我サク独り祭り
003.軽口の応酬