我サク一家。
長男=琉珂(ルカ) 長女=沙羅(サラ)
穏やかに、健やかに。
あなたが愛した者達を。
バタバタと廊下を走る軽快な音。
小さい二人は懸命に腕を伸ばし、ドアノブを静かに回す。
「しー、いいか。静かにだぞ」
「うん!」
口元に人差し指を当て、隣に居る少女に注意を促すが分かっていないのか至極元気に返事をする。
ゆっくりと扉を開けた先。
布団に包まる物体目掛け、少年と少女は飛び乗った。
「父上様ー!!」
「おはようございますー!」
「うぐっ!」
突然腹に圧し掛かる衝撃。
風影こと我愛羅は何事かと思い目を覚ます。
「……お前達」
きゃっきゃと腹の上ではしゃぐ、自らの血を分けた子供達を見た我愛羅は頬を引きつらせるしか出来なかった。
「父上様、父上様!」
「あのね! あのね!」
寝転んだままの我愛羅の腹の上をよじ登る我が子。
我愛羅は腕を伸ばし、長女の髪をぐしゃりと撫でる。
「どうした」
慈しみような声色に長男がにやりと笑う。
「お誕生日おめでとうございます!」
「ございます!」
子供達の言葉に我愛羅は瞬きを数回繰り返し、近くにあったカレンダーを視界に入れた。
連日の多忙さゆえ、自分の生まれた日など頭からすっぽり抜けていた我愛羅は、子供達の祝福の言葉に優しく微笑んだ。
「ありがとう。すっかり忘れてたよ」
「だよねー! 父上様わすれてたよねー」
「びっくりした?」
我愛羅の胸に顔を埋める長男と、サクラによく似た笑みを見せる長女に我愛羅は胸の奥が疼き、
その幼い身体を両腕でガバリと抱きしめた。
「苦しいのー」
「ギャー! 放してください!」
ギャンギャン吠える腕の中の小さな存在に我愛羅はこれでもかと言うほど、ぎゅうぎゅうと抱きしめていた。
「まーったく……いつまでも起きて来ないと思ったら」
父上様を起こすのは任せてください! と意気揚々と寝室に向かった長男長女が中々戻ってこないものだから
様子を見に来たサクラは半分だけ開いていた扉から、覗き込んで溜息を一つ吐く。
すやりすやりと眠る父と子の姿にどうしたものかと、お玉を手に持ったまま腕を組む。
「まあ、今日ぐらいはいいか」
にこりと微笑み、柔らかな布団で眠三人に向かってサクラは小さく、おやすみなさい。と告げた。
「よー、お嬢どうだった」
「ん、やっぱり眠ってたわー」
「……ご飯は」
「三人が起きてくるまでお預けね」
「俺様ショック!」
リビングで広がるサクラと守鶴の会話。
サクラと守鶴の会話は三人が起きてくるまで延々と続いていた。
2015.我サク独り祭り
004.ねむる、ねむる