転生パロ



 目の前で、薄紅色が散っていく。
紅く染まった薄紅と、真珠のように白かった肌は、綺麗で残酷な色に染まっていく。

 腕を伸ばそうにも、声を出そうにも何一つ届かない。
彼女の声が聞こえない。

 燃える炎に、焦げる匂い。
つんざく様な叫び声が耳に残る。

 心音が緩やかに止まっていく。
痛みも、苦しみも感じない。

 最後に願うのならば。
ただ、もう一度。

 もう一度だけ、彼女と。



 ***


 夢を見た。

 全て真っ赤に染める、夢を見た。
大切な、落としてしまった何かを忘れるなと言う警告なのだろうか。

 最近夢が色濃く映る。
ぱちりと目を覚ませば見慣れた天井に、見慣れた部屋。

 そっと、顔を抑えて瞼を閉じてみたが答えが出るはずも無かった。



 そよそよと、春の息吹を感じさせるそよ風に吹かれ、これから通う学校への道のりを歩いていく。
満開の桜が綺麗で、何故だか胸の奥を疼かせる。


「我愛羅!」
 名を呼ばれ、顔を向ければにやにやと笑う金髪の男。

「お前も合格してたんだな!」
「……その言葉そのままお前に返そう」
 あんだとー! と叫ぶ目の前の男は受験の際に顔見知りになった、うずまきナルトと言うらしい。

「ナルトなにやって……我愛羅じゃねーか」
「久しぶりだな」
 人が多い体育館前。
新入生と在校生が入り混じる中、ナルトを探していたのであろう黒髪の男。
こちらもまた、受験当初縁あって知り合いになった。

「サスケー、おめー遅ぇーんだよ! なにやってたんだ」
「部活の勧誘されてた」
「はあー! 何でお前ばっかり……!」
「知るか! さっさと行くぞ!」

 相変わらず煩い二人だ。
そんなことを思いながらもどこか懐かしい雰囲気すら覚える。
ふっと笑い、体育館に入ればずらりと並ぶ新入生と在校生。
引率の在校生に流されるように椅子に座らされれば厳かに進む入学式。

 正直つまらないな。欠伸をかみ殺し騒がしい隣に視線を向ける。

「なあ、お前等見たか! あのマスクの先生」
「キバ前を向け、なぜなら今は」
「ああ、見た見た! あの銀髪の先生だろ!」
「お前等うるさいぞ」

 小声でヒソヒソと話すナルトを含めた数人。
頭を抱えるサスケに大変だな。と思いながら入れ替わる壇上に顔を向けた。


『では、続きまして。新入生代表、春野サクラさん』
「はい」

 さらりと髪を靡かせ、一礼をし壇上に上がるのは『春野サクラ』と呼ばれた少女。
流れる動作に何故だか目を奪われ、逸らすことが出来ずにいた。

「おい見ろよ、サスケ! サクラちゃんだぞ!」
「うるせぇよ! 言われなくても分かってる!」
 嬉しそうなナルトの声色に思わず、知り合いなのか。と質問をすれば、幼馴染だ! と返される。

「幼稚園からいっしょだよなー」
「そうだな」
 ナルトとサスケが少々心配そうに見守る壇上にもう一度視線を戻せば、キラキラと輝く翡翠色の瞳に柔らかい薄紅の髪色。
数回瞬きを繰り返せば、何故だか目の奥が熱くなる。

 彼女を見て、何故こんなにも胸の奥が苦しくなるのだろうか。
なぜ、こんなにも泣きたくなるのだろうか。

 ナルトとサスケに気がつかれぬように、そっと手のひらを握り締める。

 春野サクラ。
彼女の事は知らないし、はじめて見た。

 それなのに愛おしいとすら感じる。
この胸の疼きの理由は、まだ知らない。



2015.我サク独り祭り
005.血に濡れた記憶は、