我サク一家。
長男=琉珂(ルカ) 長女=沙羅(サラ)



 砂漠と言えど、肌寒い季節。
ドドドドドと砂埃を巻き上げ、里内を走るのは砂隠れの長である、風影の我愛羅。
 頭につけらた鬼の面を見て「ああ、毎年の恒例行事か」と微笑みながらその様子を眺めていた。

「待ちなさーい!」
 後方で走りながら姿を見せたのは、木の葉隠れから砂隠れに嫁いできた、春野サクラ。
サクラの足元には今年で10歳になる息子と、4歳になる娘が居た。

「母上様! 僕が行ってきます!」
 サクラの前に一歩前に出て、手に持っていた枡から中に入っている物を、片手でつかめるだけ掴み、父である我愛羅に向かって投げつけた。

「父上覚悟!」
「む」

 我愛羅に向かって力いっぱい投げつけたそれは、豆。
その豆から我愛羅を護るように、砂が我愛羅の前に壁を作る。

「ああ! ずるい!」
「ふ……この砂より早く投げてくるんだな」
 ざらざらと流れる砂に巻き込まれ、投げつけた豆は地面に落ちた。
目の前に立つ息子の琉珂に向かって、ピン! とデコピンをすれば「ぎゃ!」と声を漏らして額を押さえる。
 琉珂の隣を通り過ぎようとした瞬間、頭上から落ちてくるものに一歩後退すれば、靴が擦れて砂が舞う。

 伸びてきた二つの存在に我愛羅が両手を伸ばし、掴む。

「一対三とは卑怯ではないのか」
「あら……どこが卑怯って言うのよ、立派な作戦じゃない」

 ガシリと掴みあった手のひら。
目の前に落ちてきたサクラと力で押し合いするが、チャクラを込めたサクラの力は中々に強力だ。
ぐぐぐと少し圧され気味な我愛羅は眉間に皺を入れ、どうしたものかと考えたがサクラの腰の辺りで動いた物体に"しまった"と思う。

 その存在は、サクラの腰から我愛羅の肩にぴよんとジャンプした。
我愛羅の頭に大量の豆が降って瞬間、舌足らずな声が辺りに響いた。

「おにわそとー!!」

 意味もわからずキャッキャとはしゃぎながら四角い枡の中身を、我愛羅の頭の上でひっくり返したのだ。

「やったー! 今年は沙羅の勝ちだよ!」
「きゃー! やったわね、お父様に何買って貰おうか!」
 頭にしがみ付く娘の沙羅をそのままにし、目の前で手を取り合ってはしゃぐサクラと琉珂にちょっとまて。と声を掛ける。

「無効だ」
「聞きませーん、我愛羅くん言ったものぶつけられたらなんでも好きなもの買ってやるって」
「僕、木の葉レンジャーの変身ベルトが欲しいです!」
 素知らぬ顔をするサクラと足元に引っ付き懇願する琉珂に、うぐぐと歯を噛締める。
そんな我愛羅の気持ちを他所に、沙羅は我愛羅が頭につけていた鬼の面を取り自分につけて遊んでいた。

「はいはーい! 我愛羅くんの負けだと思う人ー!」
 大きな声で叫び、サクラが里内の人間に手を上げて問えば、多くの者達がサクラの味方をし手を上げた。

 目元を押さえ、ガクリと項垂れた。

「今度木の葉に行った時に買って来よう……」

 わーいと喜ぶ琉珂の声とサクラの笑い声に、里の者達もにこやかに微笑んだ。




「…平和すぎる」
「涙が出るぐらい平和じゃん……」

 テマリとカンクロウが幸せそうな我愛羅達を見て目元を押さえ、泣いていた。


2015.我サク独り祭り
014.絶対防御