身体をあわせるのは嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど、どちらかと言うとキスのほうが好きだったりする。

 結婚をしてから気がついた事がある。
寡黙な彼は意外と情熱的だ。たぶん、こればかりは彼の姉と兄も知らなくて当然だ。




「んっ、ぅっん、我愛羅くん……!」

 身体の内側に感じる焼けるように熱い液体。
歓喜にぶるりと震えた身体は、波打つ硬い塊を逃さぬようにと更に締め付ける。
はぁ、と我愛羅が息を漏らしながら、サクラの唇に噛みつけば、いとも簡単にサクラはもう一度達してしまう。

 濡れた塊をずるりと引き抜き、気だるそうなサクラの背に腕を回し抱き起こす。
耳朶を一度撫で、瞼から頬に優しく唇を落とせば、サクラの左腕が我愛羅の二の腕を強請るように掴んだ。

「ちゅー、して」
「ん」

 甘えるように我愛羅に願う。
短く返答した我愛羅はサクラの鼻先をぺろりと舐め、優しく唇に落としていく。
ゆるりと瞼を閉じて、我愛羅の唇を受け入れるサクラは小さく微笑んだ。

「サクラは、」

 ちゅっと音を立て唇を離した我愛羅が、汗ばんだサクラの額を撫でる。
我愛羅の指がくすぐったいのかサクラは眉を下げた。

「キスが好きだな」

 右の口角に口づけをし、サクラの柔らかい唇をぺろりと舐め我愛羅は告げる。
 ぽすり、と我愛羅の胸元に額をつけたサクラはコクリと頷いた。

「我愛羅くんとだからね」
「オレとだからか」

 心臓の辺りがじわりと甘く疼くのを感じ、我愛羅は笑う。


 今までさほど気にしていなかったのだ。
確かに我愛羅と口付けを交わすのは心地良い。
だがそれが好きになったのは、きっと結婚してからだ。

 仕事に行く前にキスを交わし、テレビを見ているときも我愛羅の気まぐれでキスをする。
寝る前だって、キスをした後じゃないと落ち着いて寝れなくなってしまったのだ。

 多分、我愛羅にとってキスをすることはほぼ無意識に近い。
結婚をした後、仕事に行く前にキスをしてくれとせがんだ訳でも、特に決めたわけでもない。
寝る前にしたってそうだ。

 そう考えたあと、そう言えば。とサクラは思い出す。
ナルト達に関係がばれたのも我愛羅のキスが原因だ。

 秘密で付き合っていたというのに、我愛羅がみんなの前でサクラにキスをしたのだ。
サクラもつい癖で、何事もなく受け入れてしまった。
二人の行動を目の前で見てしまったナルト達に根掘り葉掘りと詰められ、白状させられたのはきっと忘れられない思い出だ。


 くすくすと笑うサクラに視線を落とせば、我愛羅から見えるのは形のいいつむじ。
ふっと、息を掛ければサクラの肩がビクリと揺れた。

「サクラ、もう一回したい」
「えー」

 ちょっと我愛羅くん性欲強すぎじゃない。と目を細め眉間に皺を入れる。
 サクラの背中を、我愛羅が親指でゆっくりと撫でれば擽ったそうにサクラは身じろぎする。

「やーだ」
 もう疲れたもの、と我愛羅の唇をサクラが人差し指で突っつけば、我愛羅は「むぅ」と小さく唸る。

「鬼だな」
「誰が鬼ですって!」

 むにっと我愛羅の頬を抓めば、表情一つ変えずに「痛い痛い」と繰り返す。

「じゃあ、キスは?」

 同じようで、ほんの少し違う色を持つ瞳がサクラの顔を覗き込む。
瞬きを繰り返し、我愛羅の頬を掴んでサクラは自ら我愛羅に唇を落とした。

「キスならいいよ」

 小さく漏れる吐息に、我愛羅は誘われるまま口付けを繰り返した。



2015.我サク独り祭り
023.kiss me.kiss you