細いようで、触れると実は意外としっかりしている。
本当は、彼に見られるるだけで心臓が爆発しそうなくらい早く脈を打つし、触れられてしまえば気絶しそうなぐらい恥ずかしいのだ。


 パサリ、と音が聞こえた方向に視線を向ける。
畳の上に座り洗濯物をいそいそと畳んでいる後姿を見つけてしまった。
 洗濯物を干す前に、無造作に取り込んで畳みの上に山積みにしていたものを見つけたのだろう。
何も言わず洗濯物を無心に畳む、その後姿をぼんやりと眺めてしまう。

 薄手のシャツを身に纏い、珍しい半袖姿。
袖口からしなやかに伸びる腕はとても綺麗だ。
一枚一枚、洗濯物を丁寧に掴むその指先が、意外と太い事を知っている。

 洗濯籠を抱えたまま、後姿に釣られるように思わず足を進めてしまう。

「……どうした?」

 突如背中にぽすりと当たる重みを感じたのか、動いていた腕が一瞬だけ止まる。

「んー……」

 ぐいぐいと額を背中に押し付ければ、小さく笑って目の前の背中が揺れた。

「……我愛羅くんが好きだなーって思って」

 背中にそっと、指を滑らせれば、我愛羅くんが少しだけ身じろいだのを理解する。

「サクラ」

 もぞりと動く我愛羅くんの背中から顔を上げれば、腰に我愛羅くんの腕が回され抱き寄せられる。
あ、と思った瞬間には我愛羅くんの胸元に居た。

「我愛羅くんの匂いがするー」

 甘くて、どこか砂の匂いがする。私の好きな匂いだ。
すんすんと鼻を鳴らせば、頭をゆっくり撫でられた。

「サクラの匂いをもっと嗅ぎたい」

 瞼に我愛羅くんから口付けをされ、とんでもないことを言われたものだから思わず握りこぶしで我愛羅くんの胸をゴツンと殴ってしまった。

「変態!」
「お前が悪い」

 両腕を掴まれ、ふかふかしていた洗濯物の山に押し倒されてしまう。

「ちょっと、皺になっちゃうでしょ!」
「洗濯物より今はお前だ」

 ぎゃあああとお腹の底から出た叫び声が、真昼間の穏やかな家の中に木霊する。

 ただ、背中を見て好きだなと改めて思っただけで。
少しだけ甘えてみたくなっただけなのに。

 我愛羅くんに押し切られると抵抗できなくなってしまう。

「いっ、一回! 一回だけ」
「無理だな、絶対無理だ」

 服を脱がされながら我愛羅くんに交渉したが、即座に却下されてしまった。


 結局の所、私は我愛羅くんに弱いのだ。
 ぺろりと唇を舐められれば、甘い香りに身体が震えてしまう。

 ああ、ぐしゃぐしゃになった洗濯物は、後でもう一度洗おうか。


2015.我サク独り祭り
025.皺だらけの洗濯物