ふんふんと鼻歌を歌うサクラを見つめ、我愛羅は思わず口の端をひくりと動かした。

「随分と機嫌がよさそうだな」
「あら、だって久々木の葉に帰れるんだもん、そりゃ嬉しいでしょ」
 我愛羅はひくりと口元を動かして、にこやかに笑い荷造りするサクラの鼻を思わず掴む。

「ふあ!」
 なにするのよ! と声を上げるサクラにふんっと我愛羅は顔を背けた。

「嬉しそうなお前が悪い」
「もー!」
 馬鹿! 我愛羅くんの馬鹿! と罵るサクラを無視をしてぼふりと布団の上に倒れこんだ。


「くそ……承認しなければよかった」
「今更言っても遅いわよ」



 我愛羅とサクラが想いを遂げ約一年。

 想いを遂げた翌日、砂の姉弟が住まう家に連れて行かれそのまま同居する形となった。
あまりの事にサクラはテマリとカンクロウに可笑しくないか。
他里の人間だ、それに我愛羅が連れてくることに、何で何も言わないのかと問えば二人に口を揃え「知ってた」と返されサクラは瞠目する。
マツリ以外に言っていない筈だと考えれば、テマリにバレバレだよ。と言われたものだからサクラとしては羞恥心でいっぱいだった。

 隣で笑う我愛羅を殴り飛ばしたのは記憶に鮮明に残っている。

 例の事件で被害を受けた子供達も徐々に回復し、重症だった幼い女の子もつい最近、歩けるまで回復した。
事件が収拾し、いよいよ引き伸ばす理由がなくなったことに泣く泣く我愛羅がサクラを木の葉に帰還させる許可を出したのが三日前。
 帰れることに大いに喜んだサクラはその日、我愛羅に組み敷かれたのは言うまでも無かった。



「ねぇ、我愛羅くん」
 ベットにうつ伏せで寝転がる我愛羅に視線を合わせる為、床に座りベットに手を置きその上に顎を乗せた。

「なんだ」
 近い距離でサクラの翡翠の瞳が穏やかに輝くのを見て我愛羅は腕を伸ばしでサクラの頭をやさしく撫でればサクラがにこりと笑う。


「私ね、我愛羅くんが好きよ」
「……知ってる」

 へへへと笑うサクラに、頬を緩めた我愛羅は枕に顔を思わず埋める。

「帰したくないんだが」
「まだ言ってるの? もう、あくまで私は木の葉の忍よ」
 今はまだ、だけど。唇を尖らせるサクラに我愛羅は分かってると枕に顔埋めたままもごもごと反応する。


「我愛羅くん、迎えに来てね」
「ああ……無理だったら攫いにいく」
「やだ、物騒ね」

 冗談よしてよと笑うサクラだが、我愛羅は内心説得できなかったら攫うしかないなと秘かに考えていた。


 サクラの瞼を親指で撫で、そのまま目尻を掠め頬に触れる。
擽ったそうに笑うサクラに穏やかな瞳で我愛羅が見つめ、額と目尻に唇を落とす。

「気をつけて帰れよ」
「ええ、大丈夫よ。テマリさんも一緒だもの」

 ふふふ、と笑うサクラにもう一度、帰したくない。と思ったが流石に口にはしなかった。


 窓から入る風がパタパタとカーテンを揺らす。
優しい風が二人を包んでいた。



9:恋を知る 了


to be continued