ピ、ピっとテレビのチャンネルを変えれば何処も彼処も同じような特番ばかり。
里が違くても考える事は一緒か。と湯飲みを持ち、サクラは一つ欠伸をする。
「木の葉と似たようなものばっかり……」
テレビの音量を少しだけ小さくし、テーブルにリモコンを放り投げサクラは一つ溜息を吐く。
「暇だわ……」
第一線から退き、後輩の教育に務めていたサクラにとって年末は今までに無い程の休暇だった。
するすると服の上からお腹を撫でると、内側からドンドンと手の動きに合わせて反応するような振動を感じる。
「お父さんはいつ帰ってくるのかしらねー」
ふふふ、と笑うサクラの言葉にあわせまた、ドンドンと反応する。
新たな命が宿り、大きくなったお腹を撫でるサクラの顔を母親の表情をして穏やかだった。
「うーん、後30分かー」
今日中には帰ってきそうに無いわね。
ぐーっと腕を伸ばし伸びをする。一人だが年越しの準備をするか。そう思いソファから立ち上がれば、
"僕が居るじゃない"とお腹の中の小さな命に笑いかけられた気がした。
よいしょ。と立ち上がり流しに向かい、お湯を火にかける。
戸棚から木の葉隠れ特製の年越しそばを取り出し、器を出した所で玄関先でドン、ガン! と何かがぶつかる音がした。
一体何事か。そう思いパチンと火を消し、
腰のホルスターに忍ばせたクナイがいつでも取り出せるよう警戒しパタリパタリとスリッパの音を立て玄関の扉を開けた。
「あら、我愛羅くん? どうしたの!」
玄関を開ければ何故だか額を押さえ、座り込む我愛羅の姿。
我愛羅が押さえていた手のひらを退ければ、額が赤く染まってる。
「砂の操作を誤った……」
「もー意外とドジねぇ」
座り込む我愛羅の額にサクラが手のひらを当てれば淡く光る緑の光。
痛みが引く感覚に我愛羅は瞼を閉じ、すまん。と謝った。
「いいわよ、他は?」
「大丈夫だ」
ゴーンと家の中から聞こえる音にサクラは「あ」と思わず声をあげた。
「年越しちゃったわね」
「おお……」
ゴーンと何度も聞こえる金の音。
それと同時に、砂隠れを照らすように、真っ暗な空に色鮮やかな花火が打ちあがる。
何度も何度も打ちあがる花火にサクラは空を見上げた。
「花火? 我愛羅くんは参加しなくてよかったの?」
「ああ、あれはカンクロウ達傀儡部隊が好きでやっている」
我愛羅の言葉にサクラは笑い、花火を見つめていた。
「サクラ」
「ん?」
改まった我愛羅の声色。
サクラが隣を見れば、花火の光で我愛羅の瞳が輝いていた。
「今年もよろしくお願いする」
「ふふ、こちらこそよろしくお願いします」
お辞儀をする我愛羅にサクラも釣られてお辞儀をする。
「次の年越しは三人ね」
「そうだな」
新しい命が嬉しそうに笑うのを感じ、サクラはお腹を優しく撫でる。
その様子を見ていた我愛羅はサクラの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「もー、何すんのよ」
「家に上がろう。体が冷えるぞ」
「あ、そうそう! お母さんから年越しそば貰ったのよ。作らないと」
「それじゃあ一緒に作ろうか」
「我愛羅くんっていいお父さんになるわよ」
「……それは光栄だ」
優しい光が、里内を包んでいた。
2014.12.30
今年も一年、お疲れ様でした。