一種のパラレル。
我サクで大蛇丸+サクラ




 ぽかぽかと。
 まさにそんな音が聞こえてきそうなほど温かい空気。

 太陽の光をサンサンと受け、輝く花畑に似使わない人物が一人。
 目的の人物を見つけた、歳若き麗らかな女性は透き通るような声でその人物の名を呼んだ。

「大蛇丸さんーん!」

 花畑の中、何か作業をしていたであろうその人物は、だらりと長い髪の毛を流しながら頭を上げた。
 にこやかに手を振る少女を見て、薄っすらと笑みを浮かべる。

「サクラじゃない。どうしたの」
 花摘みをしていた、顔が真っ白な大蛇丸。
 歳が随分とはなれた少女事、春野サクラが妹のようでいて、娘のようでいてとても可愛かった。

「大蛇丸さんにご報告がありまして!」
 ぱたぱたと走ってきたサクラは被っていた麦藁帽子を脱ぎ、大蛇丸の前でピシリと背筋を伸ばした。
「報告? 何かしら。新薬でも出来たと言うのかしら」
「あはは、新薬はまだなんですけど……」
「あら本当。じゃあ何かしら。随分と機嫌がよさそうだけれども」
 嬉しそうに笑うサクラに大蛇丸は、まるで母親のように微笑んだ。

「あのですね! 私結婚する事になりました」

 顔を真っ赤にして叫ぶサクラに、大蛇丸は可愛いわね、と思いながらも報告された言葉に少しだけ寂しさを覚えた。
「そう……やっとなのね」
「は、はい。やっと何とか師匠も説得して、火影様にも何とか許可を頂きました」
 麦藁帽子を持つ手に力が入るサクラ。
 それに気がついた大蛇丸は目を細めて、花を摘んでいた籠を地面に置いた。

「おめでとう、サクラ」
「あ、ありがとうございます……!」
 泣きそだったサクラの瞳から大きな雫が一筋、流れ落ちた。

「色々、大変だったみたいじゃない。火影の息子のナルト君もサスケ君も反対してたんでしょう。よく挫けずに頑張ったわね」
「お、大蛇丸さん……!」
 大蛇丸の言葉に、涙腺が緩くなっていたサクラは決壊したかの如くボロボロと涙を流した。

「はいいぃぃ……もう、皆反対するし、師匠も火影様も怖いし、お父さんとお母さんも納得してくれなかったし……
でも、テマリさんやカンクロウさんは歓迎するからって言ってくれて私どうすれば言いかもう分かんなかったんですけど」
 ボロボロと泣き崩すサクラに、ハンカチを取り出した大蛇丸は優しく顔を拭った。

「いつまで泣いているのよ。いい女の顔が台無しじゃない」
「うー……大蛇丸さーん」
 わんわん子供のように泣くサクラに、溜息を吐きながらも大蛇丸は笑っていた。


「そうだわ、サクラにいいものをあげる」
「……なんですか?」
 大蛇丸のハンカチを借りて涙を拭っていたサクラに、大蛇丸は「少し待ってなさい」と言葉を残した。

 僅か数分で戻ってきた大蛇丸の手の中にあったものにサクラは少し首を傾げた。

「お姫様は笑って、皆を幸せにするものよ」
 そう言って、ふわりとサクラの頭に乗せられたのは、花冠。
 遠い昔、不器用ながらもいのと共に作ったのを思い出し、いつかこんな冠が似合うようなお姫様になりたい! と笑いあったのをサクラは思い出した。

「素敵な旦那を見つけたんでしょう。笑って嫁いでやりなさい」
 くしゃりと撫でられたサクラはその場で立ち尽くして、ただただ涙を流していた。





「あれ? どうしたんですか」
「あらカブト、おかえりなさい」
 研究室と言う中で、似ても似つかない格好をしている上司に怪訝な顔で疑問を投げかけたカブト。
 欲しかった答えが無かった為、もう一度上司である大蛇丸に疑問をぶつけた。

「何被ってるんですか、ソレ」
「ああ、これ?
 薄暗い研究室と言う中、麦藁帽子を被っている大蛇丸。

「これは、大切なお姫様から貰ったものよ」
「……はあ?」
 何を言っているんだこの人は。と言う視線を大蛇丸に向けるが、何食わぬ顔で研究を続ける大蛇丸はただ、笑っていた。





花冠を浮かべた君の姿はきらきら眩しくて
拝借 空飛ぶ青い何か。