キラキラと輝くように見えるのはなんだろうか。
ただ、傍に居いるだけでそれだけで幸せなんだ。
「それだけでいいの? サクラは」
目の前で紅茶を飲みながらじっと見てくる親友の言葉の意味が分からず少しだけ首を傾げた。
「何のこと……?」
ピタリとケーキを食べている手を止めチラリと目の前のいのの瞳をじっと見る。
「純情なのもいいけどって話」
「えっと……」
「だから、いつまでもそれだけって事はないでしょ。いくらなんでも相手は男なんだから。
お手て繋いで仲良しこよしってだけじゃすまないって話よ」
「な……そんな事、わかってるわよ……!」
いのの言わんとしている事を理解し、思わず椅子から立ち上がり声を張り上げた。
「分かってないわよ。いつまでも少女漫画の様なお付き合いは出来ないって事よ。
大体付き合いだしてもう長いんでしょ。アンタがそんなんだから相手も手を出せないんじゃないの」
「我愛羅君に限ってそんな事……!」
ハッと気がつき椅子に腰を降ろし、いのにジロリと視線を向けた。
「何が『我愛羅君に限って』よ、風影様も可哀想よ。いつまでもお子様なお付き合いに付き合わなきゃいけないんだから」
「むっ、そんな事……ないわよ」
言い返そう。
そう思ったけれども、言い返せなかったのは正しくそう思っているから。
傍に居て、声を聞ければいいのに。
それだけじゃダメなんだろか。
家へと帰る道すがらいのに言われた事を、ぼんやりと考える。
大人の恋愛ってなんだろうか。
ぽてぽてと足を進めていけば人の気配に顔を上げた。
「我愛羅君……」
「サクラ」
先程まで考えていた人物がまさか家の前にいる事に驚き駆け寄った。
「どうしたの?」
「火影に用があってな」
目を細めて少し微笑みながら頬に触れる我愛羅にサクラはほんのり頬を染めた。
子供の頃に比べ幾分か身長が高くなった目の前の人物を見上げる様になったのは一体いつからだろうか。
「家に、上がってく?」
「いいや、顔を見れたからいい」
「……そ、う」
優しく、優しく。
まるで壊れ物を扱うような仕草にもどかしさと、少しの安堵を覚える。
どこかほっとしたサクラの表情を見ていた我愛羅は頬を撫でていた手をゆっくり下ろし、首筋を撫でた。
「ひっ……」
ぞくりと背筋に静電気が走る感覚にサクラは震えた。
「気が変わった」
「え」
我愛羅の発言に勢いよく顔を上げたサクラ。
目の前の人物が何を言っているか分からなかった。
我愛羅を家に来ないかと誘ったのは断ることが前提だったからだ。
サクラが我愛羅の瞳にコレほどまで強く「男」を感じた事はなかった。
いつも大切に、まるでお姫様のように扱う我愛羅にそういう感情が見えなかったのだ。
「ど、どうしたの我愛羅君、突然」
「お前が誘ったんだ。だからそれに応えた」
ぐいっとサクラの二の腕を掴んだ我愛羅はそのまま歩き出す。
我愛羅の触れてくる部分から熱を帯びている気がした。
「優しくするのはここまでだ」
体が熱くなるのは、きっと気のせいではない。
もう、子供のままではいられない。
純粋ごっこに飽きただけだよ
拝借
確かに恋だった
26.2.09