雲一つない暗闇。
キラキラと輝く星々が綺麗で優しい。
仕事が終わり家路へと着こうと何となく空を見上げた我愛羅の心は穏やかだった。
星、キラキラ
家の玄関をくぐり「ただいま」と言えば既に寝巻きに気が得ていたサクラが顔を出した。
「お帰りなさい、遅かったわね」
ご飯どうする? と首をことりと傾げたサクラの問いには答えず我愛羅はサクラの腕を取る。
「サクラ、出るぞ」
「え」
どういうことだと顔を上げ、瞬きをするサクラに我愛羅は続ける。
「今日は空が綺麗だ」
「えええ……」
怪訝な表情を向けるサクラを無視して「見に行くぞ」と我愛羅が言えば「寝たいんだけど」とサクラが返す。
「寝るのはいつでも出来る」
そう述べた我愛羅はサクラの腰を引き、肩にサクラを担げば驚いて声を上げる。
「ちょっ、と!!」
何をするのだと我愛羅に問うが、サクラの問いに答えず「偶には付き合え」とサクラを抱えたまま屋根に飛び乗り空を駆けた。
「いやあああ」
裸足のまま連れ出されたサクラは思わず我愛羅の首にしがみつく。
サクラを落とさぬように抱えた我愛羅が止まり、見てみろ。と言葉を落とした。
「うわ、綺麗……」
満点の星空。
澄んだ空に存在を主張し各々輝き放つその空にサクラは感嘆した。
砂隠れの外れ、サクラの瞳が爛々と輝くのを見て我愛羅は目を少しだけ細めて微笑んだ。
「たまにはこういうのもいいだろう?」
「たまにはね」
にこりと笑ったサクラは、あ。と声を上げる。
「靴、ないから抱えて連れて帰ってよね」
「……承知した」
砂の匂いを運ぶ夜の風が優しく二人を撫でていた。
26.10.31