白い肌に細い線。
 初めて出会ったときの印象が強すぎて、どうしても小柄だと思ってしまう。
決して、そんなことないのに。
 男の子ってずるいなぁ。いつの間にか追い越して、大きくなっていくのだから。

 そっと、掌を合わせれば自分よりも大きくて力強くて、とても優しい。
 愛しくて、気が付いたら手を伸ばしていた。



 夜も更けた穏やかな時間。我愛羅の私室でテレビを見ていた二人を穏やかな明かりが照らす。


「どうした」
 優しい声色で問いかけたのは我愛羅。
 先程から遠慮なしに右手を触っているサクラに問う。
「んー……好きだなぁと、思って」
 柔らかく笑うサクラの顔をじっと見る我愛羅。

 少し上から見たサクラの睫が長く見えた。
 顔には出さなかったがドキリと心の奥が疼くのを理解する。

「我愛羅君の掌って、好きだなぁと思って」
「……そうか」
 言葉短く言葉を返す。
 我愛羅の右手を触っていたサクラの掌に、指を絡めた。

「俺は、お前の掌のほうが好きだがな」
 人を癒し包み込む。
この手に何度助けられたことか。すべてを癒し、すべてを包み込み。
時には厳しく叱咤する優しい掌。

 無性に、愛おしくなった我愛羅は思わずサクラの掌に唇を落とす。
「ちょ、我愛羅君」
 少しばかり焦ったサクラの声に柔らかく笑った我愛羅。


 どこか遠くで聞こえるテレビの雑音。
 夜は穏やかに過ぎていく。




掌にキス