世界が何よりも輝いて、キラキラと綺麗だった。
ほんの些細な事が楽しくなった。なんでもない事で笑えるようになった。
愛しいと思う感情が、自分の中にあった事に驚きと戸惑いと。
自分もやはり人の子であったのかと理解する。
誰かと肌を重ねる事の意味を知った。
自分とは違う、小さな掌の愛しさを知りその掌を離したくないと思えた。
自分ではない誰かを愛する事の意味を知り、愛されるということを実感する。
まるで、ぬるま湯に浸かっているような。
穏やかで暖かい感覚。
眠れなかった、というのがまるで嘘のようで最近は寝る事に喜びを感じている。
ぼんやりとする頭。
ゆっくりと瞼を開ければカーテンの隙間から白々とした光がほんの少し入ってきていた。
目を開けようにも重い瞼が邪魔をする。
欠伸をかみ締め、ごそりと体を動かす。
隣ですやすやと眠る存在に安心と愛しさを感じ、そっと手を伸ばす。
頬を撫でれば「うう……」と小さく声を上げた。
声が聞きたい、その綺麗な瞳を眺めたい。
そう思えば申し訳ないと思いながらもいつの間にか名前を呼んでいた。
「サクラ」
少し体を揺すり、優しく。出来る限り優しく、大切な名を呼んだ。
「ん……我愛羅君? どうしたの」
目を擦りながら少し虚ろな瞳で自分の姿を写すその瞳。
ただ、それだけで喜びを感じる。
「サクラ」
「どうしたのよ……もう」
壊れぬように抱きしめサクラの肩に顔を埋める。
無理に起こしたけれど嫌がる事もしないで背中に手を回してくれる事が、ただ嬉しかった。
「もー……変な時間に起こした罰ね、今日はデートに連れてって」
「……分かった」
くすりくすりと笑うサクラの声。
ああ、それだけで幸せだ。
自分の心を、体を満たしてくれる。
サクラの手を取り指を絡め掌を合わる。
正面から言うのは少しばかり恥ずかしいから。
「好きだ、お前がいてくれてよかった」
サクラの顔は見ずに、抱きしめたまま。
「私もよ。我愛羅君がいてくれよかった」
カラリと笑うこの存在が愛しくて、愛しくて。
自分が見ていた世界を変えてくれたこの存在にただ、感謝しかない。
「昼過ぎたら街に行くぞ」
「じゃぁ甘味処に行きましょう!」
「……あ、ああ」
「何よ〜、その返事!」
「す、すまん……!」
「あはは! 冗談よ、冗談!」
ああ、なんて可愛くて、愛しい存在なのだろか。
愛し、愛し
2014.5.31.1周年リクエスト