太陽はキラリと光を放ち全てが色づき輝かせる。
肺に入る空気も、砂の匂いも我愛羅にとって全てが愛しいものになった。



「ちょっと我愛羅くん! 早く行きましょうよ!」

 カラカラと笑うはサクラ。
いつの間にか街に馴染んだ桜の色は行き交う人に笑顔を振りまく。

「サクラ様、こんにちは!」
「サクラ様じゃないか! 久々にこっち寄っていきな」
「何だい、今日は珍しく二人でお出かけかい」

 パタパタとサクラが駆ければそれだけで里の者達は笑いながら話しかけている。
 我愛羅はその様子を後ろから眺めながら、少しだけ目元を柔らかくしていた。

「そうなの! 今日は久々我愛羅くんとデートなのよ!」

 カラリと笑うサクラに、そーかいそーかい! と笑う声。
 時折聞こえるヒューヒューと冷やかしの口笛に、睨むように視線を向ければそこにはニヤニヤと笑う店の店主達。

 我愛羅はほんの少しだけ頭を抱えたくなった。

 威厳なんてあったもんじゃない。
一体何時からこうなったのかを額を押さえ暫し考えていたが、覗き込んでくる影に顔を上げた。

「どうしたの? 我愛羅くん?」

 きょとりと、見上げられた翡翠に輝く瞳に「なんでもない」と手のひらで顔を隠した。
両腕を後ろで組み「変なの」とくすくすと肩を震わせてサクラは笑う。

 笑うサクラに目尻を細めて、少しだけ笑えば「風影様は、サクラ様の事が好きなんだね!」と商店街の子供に言われてしまった。

 ぅぐ、と我愛羅が思わず唸れば、店主達が笑う。 気恥ずかしくなった我愛羅がサクラの手首を咄嗟に掴み逃げるように歩き出した。

「さっさと行くぞ!」
「はーい」

 足早に歩く我愛羅に合わせるように、サクラは小走りでついていく。
掴んでいたサクラの手首から指を解き、ひらひら揺れるサクラの指を一度撫でる。
我愛羅とサクラは、ゆっくりと指を絡めあうように手のひらを互いに握り締めた。


「風影様にいい方見つかってよかったねぇ……」

 一体誰が言ったのか。
その言葉にその場にいた店主達は、うんうん。と頷いた。



「ねぇ、我愛羅くん」
「どうした」

 繋いだ腕をぶんぶんと振り、サクラは嬉しそうに笑う。

「夜ご飯も食べて帰ろうか、デートだし」
「……そうだな。デートだからな」

 仲睦まじい二人の姿が、砂隠れの里内で目撃された。



2015.03.30
その二人。