うーん、と唸り声を上げ天井を見上げるサクラはソファに座り目元を抑えていた。
「どうした」
目元を押さえるサクラの背後から覗き込むように我愛羅が声をかける。
目を閉じたままのサクラは気が付く気配も無く眉間に皺を入れる。
「目の使いすぎかもー、目が痛くて……」
目元を手の甲で押さえるサクラに、医療忍者なのにか? と我愛羅は問うが、それは関係ない!とサクラに反論されてしまう。
「医療忍者だからっていつでも健康体ってわけじゃないのよ、それだったら無敵じゃない……」
「それもそうだな」
少しだけ呆れたサクラの声に我愛羅は肩を竦め、それもそうだな。と納得した。
「少し休めるといい」
「うんー……」
瞼をしっかりと閉じたサクラを見下ろした我愛羅は少しだけ、ほんの少しだけ目尻を下げてゆっくりと右手をサクラの目元に被せた。
「あー、我愛羅くんの手冷たくて気持ちいいー」
「そうか」
手のひらから伝わる冷たさに、サクラはずんずんと傷む目の奥が少しだけ静まる気がしていた。
「あー、このまま寝ちゃいそう」
やわやわと我愛羅の手のひらが優しくサクラの目を包み込む。
ゆっくりと離れていく冷たい手のひらに残念だとサクラは心の中で呟いた。
「ひゃっ!!」
我愛羅の手のひらが離れたと思えば瞼が濡れる感覚。
思わず声を上げたサクラだが、柔らかい何かが触れる感触に瞼をあけることが出来なかった。
「ちょっと! 我愛羅くん!」
なにしているのか。そんな事を聞くまでもなく、目が開けられないままサクラは理解する。
我愛羅の舌がサクラの瞼をべろりと舐め、唇が落とされる。
「なんだ」
「何してるのよ! 本当にもう!」
憤慨するサクラを気にもせず、最後にもう一度だけ唇を落とせば可愛らしくちゅっと音が聞こえた。
「続きはまた後だな」
「続きなんてしなくていいわ!」
すっと離れる我愛羅が仕事に戻ると告げ、部屋を出て行くのをサクラはソファの背凭れに身体を預け見送った。
「本当、馬鹿じゃないの!」
一体いつからあんなに本能のままに生きいくようになったんだろうか! と叫びたかった。
顔を赤く染めていたサクラがふと我に返り目元を抑え首を捻る。
「痛くない……」
はて? どういうことだろうか。と首を傾げるしかなかった。
おわり。
2014.12.05.blog掲載