ツイッターログ小話をSSに。


 深く深く沈んだ意識がぼんやりと浮上する。
 肌寒さを感じ、ふわふわの布団を口元まで意識的に引き上げ、小さく欠伸を噛み殺した。
 気配に気づき薄っすらと重いまぶたを持ち上げる。
「ん……我愛羅君、寝ないの?」
 目に映るは昔に比べて随分と大きくなった背中。
 サクラに背を向けベットの脇でスタンドを点け、腰を下ろし何やら巻物を読んでいたようだ。
「すまない、起こしたか」
 声をかけてきたサクラに気がつき巻物を読んでいた我愛羅の視線がサクラに向けられる。
「違うけど…」

 感情を表すのが苦手な目の前の人物がここ数年素直になった。
と、言ってもごく限られた数人の前だけだが。
 スッと我愛羅の手が伸び、サクラの頬を撫で髪の毛に触れる。
 さらさらと流れる髪をサクラの耳に掛けた。
 擽ったそうに目を細め、サクラは柔らかく微笑んだ。
「いくら昔からあまり寝れないって言っても、もう普通の人と大差ないんだから寝れるときは寝ないと」
「ああ、分かっている」
 柔らかく笑うサクラの雰囲気に我愛羅の心にじわりと染み渡る何か。

 知らぬ感情に戸惑うときもあったが、穏やかなこの感情大切だと感じた。
 失いたくないと感じた。
 誰かを愛するという事を、我愛羅は知る。

 何て、幸せなんだろうか。

 我愛羅はサクラのこめかみに唇を落とした。
 暗い部屋の中を、橙に光るスタンドの明かりだけが二人を色濃く映していた。



H25.10.24