リビングのソファに座りサクラが見たいというテレビがあったので並んで見ていれば
突然肩に掛かる柔らかい重みにビクリと背中が震えた。

「さく……」
 名を呼ぼうとすれば、目の前で流れたさらりとした薄紅色の髪。
思ったよりも本格的に寝てしまったのか、するり視界から消えれば太股に乗る微かな重み。

 視線を向ければなんとも幸せそうに寝ている顔にほんの少しだけ、顔に熱が集まるのを理解する。

「この状況をどうしろと……」
 並んでテレビを見ていたはずなのに、何故サクラは自分の膝で寝ているのか。
ぐぅ。と寝息を立てるサクラの顔を覗き込むように見れば、ほんの少し出来ている隈に、
ああ、そうか。最近多忙だったからな、と頭の中で思うと同時に自分も多忙でサクラとすれ違った生活を送っていた為に
サクラに触れてないな、と思えば鼻腔を擽るサクラの甘い香りにもどかしく感じると共に胸の辺りがうずうずとする。

 触りたい。

 思考回路がその答えにたどり着いた瞬間、我慢だ。ここは我慢をしなければいけない、いや、しかし……
とサクラの体が息をする度上下するのを眺め、コレは何の拷問だとソファの肘掛に右肘を付いて目元を押さえた。

 遠くから聞こえるようなテレビの音など我愛羅の耳には入らず、自分の膝の中ですやすや眠るサクラの髪を柔らかく梳いた。

 起きたら覚えていろ。


 などと勝手に心の中で誓う我愛羅の心情など露知らず、すやすやと眠りこけるサクラは至極幸せそうに笑っていた。



08.寸止め
2014.6.22 掲載