ガチャリと突然家の玄関が開いたと思えばそこには無表情な顔を貼り付けた我愛羅が居た。

「ど、どうしたの」
 連絡も無しに突然訪問に来た風影事、我愛羅は質問には答えず靴を脱ぎ捨てズカズカと家の中に上がってくる。
 親の元から離れ一人暮らしをしてもう数年。

 何時の頃からか何の連絡も無しに我愛羅は私の家に来るようになった。
仕事で居ないときには勝手に家に上がってお茶を飲んでたりもする。

 一人暮らしの家はこじんまりとして移動範囲はトイレかお風呂。
 それ以外はテレビと小さなテーブル。そしてベットがあるぐらいだ。

 ベットとテーブルの間に座っていたサクラは、夕飯の焼き鮭を食べていた箸を止めた。

 ボフンと音を立てベットに顔から倒れこんだ我愛羅。
サクラの問いには答えず、無言でベットに寝転んだままの我愛羅に小さく息を吐いた。

 無言の室内。わいわいと聞こえてくるのはテレビのバラエティ番組の音声だけ。
 顔を少しだけ動かしてチラリとサクラの後姿を見る我愛羅。
 ゆるゆると腕を伸ばそうと持ち上げれば、サクラが振り向いた。

 宝石のような翡翠の瞳にドキリとし伸ばしていた腕が止まった。
 サクラの掌が我愛羅の頬を撫で、耳を撫でる。
少し高めの体温が我愛羅にとって心地よかった。

 ゆっくりと、一度瞬きをして「サクラ」と呼んだ。


 我愛羅はこの空間が好きだった。
人柱力でも、風影でもなく、ただ一人の人間として居られるこの場所が大切だと感じていた。



「いいの我愛羅君。テマリさん達探してるんじゃないの? それに里を空けて大丈夫なの?」
 穏やかな声で我愛羅の頭を撫でながら聞くサクラ。
 自らの膝の上に頭を乗せる我愛羅に優しい表情を向けていた。

「一週間ほど空けても問題ない」
 寧ろ暫く木の葉に居る! とサクラの腰にしがみ付いた。
「ふふ、後でテマリさんとカンクロウさんに怒られるわよ」

 今頃、我愛羅が居ないことに苦労をしているであろうテマリとカンクロウが想像でき
後で謝罪をしないといけないなーとサクラは苦笑いをした。



10.ひざまくら




 暫く出ます。探さないでください。

「テマリ! また我愛羅が居なくなったじゃん!!」
「なんだと! 我愛羅だけ木の葉に行ったのか!」

 風影の机の上に走り書きで書かれたメモを見つけた姉兄の声が風影不在の室内に木霊した。






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サクラ欠乏症のストレス。
結婚するまでの間、二ヶ月に一回ぐらいの頻度で
木の葉の里にやってくる我愛羅。
行動を起こす前に重要な仕事を尋常じゃない勢いでこなしているらしい。

姉兄が迎えに来るまでサクラの家に居候している我愛羅です。


H25.7.9