※我愛羅とサクラの子供が出てきます。
名前は琉珂(ルカ)加琉羅さんから拝借。




「ごめんなさい。我侭言って」
 里の入り口で謝っていたのは風影の妻、サクラ。
「構わん、サクラの親友の為だ。行って来い」
 夫である風影とその横に居たのは息子。

「まぁ、たまにはいいじゃないか。女二人で旅行みたいなもんだよ」
「テマリ、護衛は頼んだぞ」
 我愛羅の言葉に頷くテマリ。

「行ってらっしゃい、母上様」
 元気に手を振る息子と、じっと見ていた我愛羅に手を振ったサクラ。
 砂嵐が落ち着いている間に早く行こうとテマリに促され、里を後にした。



「すみませんテマリさん」
 サクラの謝罪に、気にするな。と笑ったテマリ。
「いのの結婚準備だろう、何も気にする必要は無いよ」

「ありがとうございます」

 立場や里が変わってしまったけれど、何一つとして変わらずサクラに接するいの。
サクラと我愛羅の婚姻の儀も、サクラが妊娠したときも直ぐに駆けつけ祝ってくれた。
 自分のことのように泣きながら笑ういのをサクラはとても大切に想っている。
 踏み込めない強い絆が二人の間にあるのだと知るとテマリは少し、ほんの少しだけ嫉妬を覚えた。

「なに、サクラの大切な親友だ。だったら私達にとっても大切な人だよ」
 テマリの言葉に、もう一度ありがとうございます。と言葉を述べる。

 心の中で、我愛羅にもありがとうと呟いて、
後日、木の葉で落ち合うようになった夫と息子に申し訳ないと思いながら
故郷である木の葉の里に急いで向かった。




 ***




「父上様」
 少し緊張した表情で東雲色をした髪を揺らし、両親と同じ翡翠色の瞳がじっと見つめていた。

「どうした」
 齢5歳になる息子が執務室に入ってきた事に珍しいと思い、椅子から立ち上がる。
 執務室の扉を少し開け覗き見る息子に近づき視線を合わす為、片足を床に付いた。

「あの、欲しいものってありますか」
「欲しいもの?」
 突然の琉珂の言葉に疑問を持つ。
 キラキラと輝く瞳に、何か期待されているようだがこれといって欲しいものはなかった。

「いや……特には」
 我愛羅の言葉に少しがっかりした様子の琉珂の頭に、右手を置いた。

「俺は、里の者が笑っているなら何も要らない」
 軽く撫でると困ったように、眉を下げながら笑う息子に我愛羅も少しだけ口元を緩めた。

「はい!」
 へへへと笑った琉珂はパタパタと足音を立て廊下を走って行ってしまった。
 笑った顔や、元気な姿がサクラに似ていると思い後姿を見送った。




「伯父様ー!」
 父である我愛羅の元から走って一目散に向かったのは伯父であるカンクロウの元。
新しい傀儡作成をしていたカンクロウは手に持っていた工具を作業台に置き、
甥である琉珂を向かい入れた。

「おー、琉珂。どうだった?」
「駄目だった! 父上は何も要らないって」
 ぷくっと頬を膨らませた琉珂に、やっぱりなぁと思ったカンクロウは部屋に備え付けている
冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。
「我愛羅は欲しいもん無いからな。まー、お前がすることだったら喜ぶはずじゃん」
 グラスにオレンジジュースを注ぎ、琉珂に手渡す。
 素直に受け取った琉珂は一口ジュースを飲んだ。

「でも、折角だから父上と母上が欲しいものをあげたい。……父上忘れてるんじゃないかなぁ」
 近くにあった椅子に座り、グラスの中のオレンジユースがゆらゆらと揺れるのを見つめ、溜息を吐いた。

「結婚記念日」
 がっかりと落ち込むような様子の琉珂に苦笑いをするカンクロウ。
「そうは言ってもまだ1ヶ月は先じゃん」
「そうだけど……でも明日には木の葉の里に向かうし。折角だから砂隠れの里じゃ
手に入らないものをプレゼントしたいし……」
 足をぷらぷらと動かす琉珂。

「木の葉に着いてからでもいいじゃん。テマリもそれとなく聞いてみるって言ってたしよ」
「はい」
 ぐーっと残りのジュースを飲み干し、カンクロウにグラスを返す。

「ほら、明日も早いから早く寝るじゃん」
「はい。叔父様ありがとうございました」
 部屋の入り口でペコリとお辞儀する琉珂に、歯を磨いて寝ろよ。と言えば頷いた。



 私室にて、書類を纏めていた我愛羅はふー、と溜息を一つ。
 扉の前に向かいガチャリと遠慮無しに開けた。

「何をしている」
 扉の前でビクリと肩を震わせた人物は琉珂。
 時刻は既に日付を跨いだ頃。普段は就寝している時間に何故此処に居るのか。
疑問が頭を過ぎり我が子をジッと見れば心配そうな瞳が見えた。

「父上様は里のみんなが好きですか」
 一体今日はどうしたというのか。息子の考えている事が分からず内心首を傾けた。
「ああ」
「じゃぁ、テマリ伯母様も好きですか」
「ああ」
「カンクロウ伯父様も?」
「……ああ」
 若干、間は空くも頷く。
「従者の方も、意地悪な上役な方も、エビゾウおじい様も、
ナルトさん達のも、皆のことが好きですか」
 立て続けに質問をしてくる琉珂の頭を撫でた。


「僕と母上様のこと、好きですか」

 不安な表情で見つめる琉珂に少し驚いて目を見開いた。

「無論だ。愛してる」
 嘘偽り無い言葉。
 少し照れたように恥ずかしく笑う琉珂は、やはりサクラに似ていた。

「じゃぁ、父上様。約束してください」
 右手の薬指を我愛羅の目の前に突き出した琉珂。
 どうすればいいか一瞬分からなかったが、サクラと琉珂が約束事をする際にしていた行動を思い出した。
「約束?」
「来月の十日は大切な日なんでお休みにしてください」
 来月に何かあったか、と少し思案すれば直ぐに思い出し、少しだけ浅く息を吸った。

「ああ、約束しよう」
 我愛羅も右手を出し、琉珂の薬指と自らの薬指を結んだ。

「じゃー、指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った!」
 ニコニコ笑い、木の葉に伝わるわらべ歌を歌い約束を交わす。

「男同士の約束です!」
 ぐっと爽やかに拳を突き上げる姿に、木の葉の連中に感化されているなと内心思う。
 一方的に会話を切り上げ自室まで走っていく後姿に、少し息を吐いた。


「結婚、記念日か……」
 ガリガリと首の付け根を掻き呟いた我愛羅。
 サクラと結婚をし、あまりにも忙しい日々が続いたため、今まで結婚記念日という事を意識したことが無かった。
それでも、毎日のように愛を囁き、行動を示していたと自負している。

 だが、やはり結婚に関わる事に関しては特別なのだろう。
昔からの親友の結婚を機に、何かを思ったのかもしれない。



 息子と指切りをした掌を眺め、笑みを溢した我愛羅は幸せそうな顔をしていた。
 


14.指切り





いのの結婚で里帰りをするサクラと護衛のテマリ。
式の準備とか諸々手伝うので我愛羅たちより早く木の葉に向かった感じです。

いのの結婚で、そういえばもうすぐ結婚記念日だわーとカレンダーを見て呟くサクラ。
その様子を見ていた琉珂は結婚記念日って何?とテマリとカンクロウに聞きに行きました。

そこで二人が結ばれた日だと教えられ、そういえば結婚記念日何もしてないなとテマリが呟いたのがきっかけ。
まさか父親は母親を好きじゃないの!?と思った息子が心配したって話です。
結婚記念日に何かプレゼントしたい! と言った琉珂に協力をするテマリとカンクロウ。

両親の呼び方をどうするか悩んだ結果、父上、母上で。
テレビで放送されていた時代劇とかの影響でもいいかもしれない。

息子の髪色は、東雲色(しののめいろ)です。
我愛羅とサクラの子供には丁度いい色かと思いまして。


H25.7.14