R-15


 腕に重みを感じパチリと目を開け暗闇をぼんやりと見た。
 チラリと腕の重みに視線を落とす。

 腕の中で身じろいだ薄紅色の花。
 さらりと流れた髪に我愛羅は惹かれるように手を伸ばした。
 髪を梳き、白い頬を親指で撫でた。

「ん、う……ん」
 触れられる感覚に反応し声を上げるのに気を良くした、我愛羅は唇を引き薄っすらと笑う。 
 薄暗くてよく見えないが腕の中で眠る妻、サクラの首元から鎖骨に自分が残した痕跡があるのに腰が震える感覚がする。

 ああ、ここで事に及んだら朝、目を覚ましたら文句を言われるだろう。
 そう思いながらも止める事はしなかった。
 なにせ我愛羅もまだ若い。
 つい数時間前まで互いに求め合っていたのだ。
 その熱を思い出すのは簡単だった。
 首筋に顔を近づければ鼻腔をくすぐる甘い香り。
 思わず噛み付くように唇を落とし自分のものだという証をまたひとつ。
 
 チクリとする感覚にサクラはびくりと体を震わせ目を覚ました。

「が、我愛羅君っ」
 今どういう状況か瞬時に飲み込むのは時間が足らず、サクラは目を見開いた。
「なんだ」
「なんだじゃないわよ! さっきしたじゃない!」
 覚醒した頭で部屋の時計を確かめ我愛羅の行動に声を上げる。

「足らん」
 我愛羅の一言。
 サクラはぐらりと頭が揺れる感覚がした。
「ま、ま、待って! 無理、無理だから!!」
 我愛羅の肩を押し返そうと腕を伸ばせば、その両腕を我愛羅に捕まれボスリと布団に押し付けられた。
「体力をつけろ」
「んな無茶な!」
 サクラの反論はいとも簡単に我愛羅に飲み込まれてしまった。




 翌日、胸元や首筋に付いた痕を隠すためにストールを巻いたサクラと、それを見ながら満足そうな顔をしている我愛羅がいた。



15.痕跡

2014.05.18