穏やかな日中。
書類を手に取っていた執務室の扉がコンコンと叩かれ、入れ。と言えばゆっくと目の前の扉が開かれる。

「我愛羅、木の葉から医療使節団が来たよ」

 テマリの後に続いて姿を見せたサクラの姿に我愛羅は椅子から立ち上がる。

「よく来たな」
「お久しぶりです」

 ぺこりと頭を下げたサクラにいつか見た光景を思い出した。

「ん……元気そうでなによりだ」
 サクラの前に立ち、ポンッと頭に手を乗せわしゃわしゃと髪を撫でれば、もー! と言いながらサクラは顔を上げた。
「なにするのよ!」
「……お前はそっちのほうが似合ってる」
 目元を細め薄く笑う我愛羅にサクラは首を捻った。

「え、髪? 髪の毛?」
 ぼさぼさな髪の毛の事か? と唸っていれば後ろで見ていたテマリがニコリと笑った。

「我愛羅、それじゃ伝わんないよ」
「む、そうか……」
 テマリの言葉に妙に納得した我愛羅だったがサクラは更に首を傾げ何の事だと視線で問う。


「お前に、悲しい顔は似合わない。笑った表情が似合ってる」

 瞳を見られながら言われた我愛羅の言葉にサクラは理解するのに時間が掛かり、鈍く反応した。

「っ、あ、ありがとう……!」
 頬をほんのり染め手の甲で顔を隠しながらサクラはお礼の言葉を述べる。
サクラのその表情に満足したのか我愛羅は目を細くしてもう一度だけ頭を撫でた。

 険しい道に身を投じ、更に苦しむ事も辛い事もあるだろう。
理不尽に攻め立てられる事もあるだろうし、泣きたくなり全てを投げ出したくなる事もあるだろう。
 
 その時、助けられるのが自分であればと。




4 誰が君を責めても僕だけは

 お前の味方で居たいと願う。




2014.08.31