ギラギラと輝きを放つ太陽。
照りつける暑さと、グラウンドで行われている体育祭という行事に汗を掻きながらも皆真剣で、笑顔だった。
「ふあー疲れたー……!」
ぐーっと背筋を伸ばし声を上げる。
太陽の眩しさにただ、目を細めた。
「サクラ! もうすぐ昼休憩よ!」
「いの! もう終わったの!」
ぱたりぱたりと走ってくる親友のいのにサクラは顔を向けた。
「うん、後は先生達がしてくれるから休憩に行ってきなさいって」
「そっか、じゃあお昼どうする? うちお母さん達来てるけど」
「あ、さっき見たけどうちのお父さん達とサクラの所のお父さん達一緒にシート敷いてたわよ」
サクラの質問にいのは体育祭の実行委員の仕事の途中で目撃した
自分の両親とサクラの両親が仲良く話していた事をサクラに告げる。
「それよりアンタ大丈夫だったの?」
「大丈夫よ、大した事ないわよ」
午前中のプログラム。
障害物競走の中で平均台の上から盛大に転んだサクラは保健室に運ばれた。
其処まで酷くはなかったが、今日一日体育祭という事で保健医のシズネにガッチリと包帯を巻かれてしまったのだ。
「あのサクラちゃんが盛大に転ぶなんてね〜、一体どうしたのかしらね」
「う、煩いわよ。ちょっとよそ見して転んだだけ! もう恥ずかしかったんだから!」
転んだ瞬間に大声を上げたナルトと駆けつけたサスケに運ばれ、注目の的になり膝の怪我よりも恥ずかしさの方でいっぱいだったのだ。
「例の彼も見てたわよーあの後会ってないんでしょ」
「プログラムが違かったから……」
そう言うと、前を歩いていたいのが突然足を止め、サクラはばふっと背中にぶつかった。
「ちょっと、いの〜。突然止まらないでよ」
「ほら、サクラ。あそこ」
いのの視線の先を覗き込めば、水道でナルト達が頭から水を被っていた。
その中で見つけた人物にサクラは思わず視線が止まってしまった。
物静かで普段露出もしない我愛羅。
几帳面な一面がある我愛羅が体操着で顔を拭っていた事に驚いた。
サクラは、ああ、彼の新しい一面を見た。とぼんやり思い、チラリと見えた我愛羅の腹筋になんとも言えない感情が胸の辺りを漂った。
「サクラ」
カチリと視線が合ったと思えば、少し目を見開いて小走りで近づいてくる我愛羅にサクラはビクリと肩を震わせた。
「あら〜我愛羅君じゃない」
いのの言葉を聞いて思わずいのの背中に隠れるサクラに我愛羅は少し眉間に皺を入れた。
「……盛大に扱けてたな」
「うぐっ」
ザクリと刺さる我愛羅の言葉。
しっかりと見られていたことにサクラは益々いのの背中に隠れてしまう。
「まぁ、まぁ、我愛羅君もそんなに言わないであげてよ。これでも恥ずかしがってんのよ。ね〜、サ・ク・ラ・ちゃ・ん」
「う、煩い! いの!」
いののからかう様な声に顔を真っ赤にして答えるサクラ。
それを見て我愛羅は小さく息を吐いた。
「元気そうなら、それでいい」
そう言い、腕を伸ばした我愛羅はサクラの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「う……うん」
小さく頷くサクラ。
そのサクラを見る我愛羅の目は至極優しかった。
「山中、サクラを頼むぞ」
「我愛羅君は心配性ね〜。大丈夫よ、この子この後の競技ほとんどないから」
「わかった」
「な、何よ……二人して」
まるで子供のように扱われる事にサクラは納得がいかず頬を少しだけ膨らませた。
「はいはいー、行くよサクラ〜」
「え、あ、うん!」
いのに手を引かれるサクラは我愛羅手を振る。
「あ、我愛羅君残り頑張ってね! 応援してるから!」
「ああ」
サクラの言葉に右手を上げて答えた我愛羅。
そのままガリガリと首筋を掻く我愛羅に背後からの、ドンっと衝撃。
「我愛羅〜! 何サクラちゃんと仲良く話してるんだってばよ!」
「最近サクラと仲良いよな〜我愛羅!」
我愛羅の背中をバシバシ叩くのは同じクラスのナルトとキバ。
付き合っているのか!
どうなんだ白状しろ!!
という問いかけに無言を貫いていると
バシャバシャと冷たい水が降りかかった。
「冷て〜!! 何すんだサスケェ!!」
「何の恨みがあるってんだ!」
「暑かったんだろ丁度よかったじゃねぇか」
ナルトとキバがギャンギャン吠えるのを、ホースを持ったサスケが鼻で笑っていた。
我愛羅ははぁ、と小さく溜息を吐き濡れてしまった前髪を掻き揚げるとクスクスと聞こえた笑い声に視線を向けた。
少し遠くで、サクラ達が我愛羅達を見ながら笑っていた。
それだけで我愛羅はすべての事を許せてしまいそうになっていた。
夏、カラリと晴れた太陽が少年達を包んでいた。
15 体育祭、日に焼けて
2014.05.25