数日間の任務に出て真夜中、執務室に戻ってみれば、溜まりに溜まった書類にため息を吐く。
毎日毎日、紙と判子を押していく日々に嫌気が差して体を動かそうと思ったら思わぬ代償だと気がついた。
「これは、火影殿の気持ちも分からんでもない」
同じ「影」の立場に就いている賭け事が好きな同盟国の長を思い出した。
机に近づき、積み重なっている書類を一枚手に取る。
それは任務終了報告書とは別の書類。それは部下からの依頼状。
「仕方あるまい」
椅子に座り、筆を執る。
同盟国である木の葉隠れの里でも、自分を恐れず真っ直ぐ強い瞳で見てくる人物を思い出す。
現火影の弟子であり、自らの兄を救った腕は疑いようも無い。
それに、木の葉の忍の中でも砂隠れに強い想いを持っているものも早々居ない。
相談役のエビゾウじい様も喜ぶだろう。
そんな事を考えながら認めた密書は、最後墨が滲んでしまったがまぁ、良しとしよう。
火影殿から届く密書も、明らかに酒を溢したであろう染みと匂いがする物も多々あることだし。
早く、彼女が来ればいい。
前回里に来てくれてから半年以上が経つ。
頭のいい彼女は自分が知らぬ知識を持つ。その知識量に驚く事もあれば、
金髪の彼と同じように単純な事で笑ったり、泣いたり感情豊かで見ていて面白くなる。
綺麗な存在だと思っている事は姉兄にすら話した事はない。
パタンと筆を机に置き、立ち上がる。
明日の朝、書類が追加されるであろうと思いつつもこれ以上何もする気が起きないため
全てを明日の自分に任せる事にした。
日に日に色濃くなっていくこの感情が何故だか大切で、
自分自身、こんな優しいと思える感情があった事にただ、驚きが隠せなかった。
1.こんな想い知らなかった
H25.7.29