オビトさん存命。in木の葉



 そよそよと心地良い風。
風の中に香る腹を刺激する匂いに釣られオビトが暖簾をくぐれば目の前の店主がニカリと笑う。

「おう! オビトじゃねーか、いらっしゃい!」
「ちわーひさしぶりっす」

 よいしょ、と椅子に腰掛メニューを眺めればどれにする、新作にしてみるか? と木の葉のラーメン店一楽店主である
テウチに問われるが、うーんと悩みオビトは顔を上げた。

「いや、おっさんチャーシュー「大盛りで!!」

 オビトの言葉に被せた声。
くるりと振り返れば、にこりと笑う少女が一人。

「サクラ……!」
「こんにちは、オビトさん!」

 同期であるカカシの教え子、第七班の紅一点である春野サクラの姿があった。

「え、今、大盛りって」
「気にしないー、気にしないー」

 オビトの言葉に笑いながら隣の椅子に腰を下ろしたサクラにちょっとまて。と言おうとしたが
ずいっと目の前に現れた湯気を出しながら食欲をそそるラーメンに思わず瞬きをした。

「ヘイ、お待ち!」
「わー! おいしそう!」
 いただきまーすと割り箸をパキリと割るサクラに「いや、サクラ、今…」と言葉を続けようと試みたが
テウチから、ヘイ、もう一丁! と目の前にドンとラーメンを置かれ瞬きを繰り返した。


「なにしてるんですか、食べないとのびますよ」
 もぐもぐと美味しそうにチャーシューを頬張りキョトリとした瞳でサクラはオビトを見る。

「え、えええ……」
 いまいち状況が飲み込めないオビトがサクラとラーメンを交互に見ていれば、
サクラが「あー! やっぱり美味しい!」とにこやかに声を上げた。

「お、嬉しいねぇ!」
 サクラが笑いテウチも笑う。

「ですよね! オビトさん!」
 問われたオビトは思わず、おう! と頷いた。
オビトの顔を見てサクラはうん。と微笑む。

「やっぱり一人で食べるより二人で食べたほうがもっと美味しい!」
 ねぇ。とオビトに瞳で問うように言えば少し驚いた表情を見せ、二、三瞬きをする。

「そうだな!」
 ニカリと笑うオビトに、今度ナルト達と一緒に食べましょう! と言いながらラーメンと平らげた。

「ああ、勿論だ」
「オビトさんのおごりでね」
 にっこりと微笑むサクラにオビトはヒクリと口元を歪ませた。

「ま、まかせとけ……!」
「ふふ、約束ですよ」

 可愛らしく笑うサクラにオビトはコクコクと頷くしか出来なかった。




26.10.31