粛々と、厳かに、穏やかに行われる式。
純白のドレスに身を包み、化粧を施したサクラを横目で見ればバッチリと視線がぶつかる。
にやりとピンクに染まる唇を引き上げ、悪戯をするかのようにサクラ笑う。
思わず苦笑いをすれば、目の前に立つ新婦が業とらしく咳払いをし、読み上げる。

『その健やかなる時も、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも 富めるときも、貧しいときも
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け。その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか』

 教会に響く言葉。
互いに誓いを立て、指輪を交換すれば新婦の口から"誓いのキスを"と紡がれる。
ヴェールを捲れば、チクチクと刺すような視線。
客席に視線を向ければワクワクする表情のナルトとサスケ。
カメラを持つのはサクラの親友の山中いの。そしてビデオを回していたのは日向一族の日向ヒナタ。

 くいっと袖を引かれ、視線を下ろせば頬を淡く染めたサクラの顔。
うぐぐ、と一度咳払いをし腹を括りサクラの唇に、自分の唇を合わせた。

 キャー!! と聞こえる黄色い歓声と、うあああ!! と聞こえる喚声。
客席を見れば、まるで地獄絵図だなと思ってしまう。
「あああ!! サクラちゃんが! サクラちゃんが!!」
「ううう! サクラさんお綺麗ですううう!!」
「ヒナタ撮った!? ちゃんと撮れた!?」
「はい! ばっちりです!」

 騒がしい木の葉の面々に、思わず呆れ顔になってしまうが、客席に居た姉と兄の姿を見れば満面の笑みだったので仕方がないかと納得する。
阿鼻叫喚するナルト達を見ていれば、するりと右腕が取られる。
いつのからか見下ろすようになったサクラの顔を覗き込めば、嬉しそうに笑っていた。

「我愛羅くん、私凄く嬉しいし、幸せよ」
「……そうか」
 こんな未来がくるなんて幼かったオレは考えも着かないだろう。
里を超え、互いに笑い合ったり喧嘩したりする友が出来る事も、
これからの人生、共に歩いていく伴侶が出来る事も。

「サクラ、」
「ん?」
 腕を掴んだまま、サクラが見上げてくる。
宝石のように輝く瞳が、綺麗だった。

「幸せだよ」

 ああ、泣きたいぐらいに幸せだ。
姉が笑って、兄が笑ってる。
いつかの自分はあの二人を姉兄と思ったことすらないと言っていた。
そう言わないと不安定な心が壊れそうだった。

「ねえ、我愛羅くん」
「なんだ」

 サクラが幸せそうに、ふわりと笑う。

「これから沢山喧嘩するかも知れないけど、一緒に幸せになりましょうね」
 その言葉に小さく頷き、思わず顔を逸らせば、不審に思ったのかサクラが顔を覗き込んでくる。
はたり、と驚いた表情をしたサクラが手を大きく上げ、いの! いの! と客席に向かって声を掛けた。

「写真! 写真!!」
「ぇえ!?」
 オレの顔を指差し、サクラが親友である山中いのを呼ぶのを制止する。
「やめろ」
「だって……!」
 ずっ、と思わず鼻を啜り、神父の前でギャイギャイと小競り合いをすれば、何いちゃついてるんだ! と五代目火影が鬼のような形相でこちらを見ていた。

「全くだ、いちゃつくなら式が終わってからにしろ」
「サスケ、まあ、いいじゃないか。今日は二人の結婚式だよ」
「テンゾウ……そうは言ってもねこちらとしては、娘を盗られた心境でね」
「先輩、そんなこと言ってるからサクラに、最近爺臭いって言われるんですよ」

「集合写真はどこで撮るんですかね?」
「あれー? 外って言ってなかったけ、ねぇネジー?」
「外だと言われていただろう。我愛羅とサクラが出た後に俺達も出るんだぞ」

 わいわいと煩い客席に、サクラと顔をあわせて笑い合う。

 ああ、なんて幸せなのだろう。
喜びも、悲しみも共に乗り越えていけたのならば。



2015.我サク独り祭り
01. 健やかなるときも、病めるときも
02. 僕を待つ灯火