風呂から上がればカクン、カクンと舟を漕ぐサクラを見つけ肩に手を置いた。
「オイ、寝るなら着替えて布団にいけ」
「ぅ、ううー……」
 優しく揺すられサクラは目を擦り、大きな欠伸を一つする。
「おふろ、はいる」
 ガシガシと目元を擦っても、擦っても目が覚めないサクラは舌足らずで我愛羅に意思を伝えるが、
今にも深い眠りに落ちてしまいそうなサクラに駄目だ。と言い放つ。

「風呂で寝ると危ないだろう、明日の朝入れ」
「うー……」
 風呂に入りたい、でも眠い。その葛藤が心の中で繰り返し、目の前に立つ我愛羅にしがみ付いた。

「オイ……」
 しがみ付いてくるサクラの頭を撫で、髪を耳に掛ければくすぐったそうにサクラが笑う。
「ねるー……ベットまで連れてってー」
 ぎゅーとしがみ付くサクラに、仕方がないなと小さく笑い我愛羅は、サクラの膝裏に手を入れた。

「我愛羅くんの匂いがするー」
 すん、と鼻を犬のように動かし我愛羅の胸元に顔を埋めて安心したのかサクラは意識を手放した。

「まったく……」
 サクラの行動にいつもいつも振り回される。
ふとした瞬間にドキリとすることなんてよくある事だ。

 心中穏やかではない我愛羅はそっと、静かにサクラをベットに寝かせ布団をかける。

「おやすみ、ゆっくり寝るといい」
 額に唇を落とし、一度サクラの頬を撫で笑みを落とす。
パチンと電気を消し寝室を後にする。

「……心臓に悪い」

 流し台に手を付き、呟いた言葉は静かに響く。
今日は飲むか、よし飲もう。そう決意をし冷蔵庫から冷えたビールとグラスを取り出しリビングに向かった。


 結婚をしていたら毎日何かしら起こるらしい。
一人じゃないと実感する。




2015.我サク独り祭り
03. 記念日じゃなくても
04.指輪の跡