共にいる時間が長ければ、長いほど、喧嘩もするし言い合いもする。
何であの時、あんな言葉を吐いてあんな行動をとってしまったのかと後悔することだってある。


「で、どうしたって言うんだい」
「……家出してきちゃいました……」
 ソファの上で足を抱え、むすりと呟く義理の妹であるサクラとの会話に大きく笑う。

「じゃあ、今頃我愛羅は家で一人でいるってわけか」
 あっははとお腹を抱えて笑うテマリにサクラは、もう! と声を上げる。
「テマリさん、そんなに笑わなくても……」
「悪い、悪い」
 涙を拭いながらテーブルに珈琲カップを二つ置き、テマリはサクラの隣に腰を掛ける。
「いやー、アンタ達が夫婦喧嘩ねぇ」
 テマリの言葉に口篭り、口元をへの字に曲げる。

「で、原因はなんだったんだ?」
 なんだったろうか。些細なこと過ぎて覚えていないのだ。
互いに最近忙しくて、お互いにイライラしていた。

「もう、わかんないです……お互い折角の休みだったのに」
「本当……お前達は」
 可愛いな、とサクラの頭をクシャリと撫でる。

 ガタン! と音がしたかと思い玄関先を見たテマリは弟であるカンクロウが居たことに、どうした? と声をかけた。

「サクラ居るじゃん?」
 リビングに上がってきたカンクロウにサクラは、はい! と返事をする。
「なにか……」
「おー、居た居た」
 サクラを見つけ、カンクロは業とらしく大きく溜息を吐いた。
「我愛羅がな……」
 ふう、と言葉を漏らすように答えるカンクロウにサクラは立ち上がる。
「我愛羅くんがどうかしたんですか!?」」
 心配そうに眉を下げたサクラを見て、いいから家に早く帰ってやれとカンクロウは首を横に振る。

 一体何があったというのか。
怪我でもしたのか、それとも倒れたとでも言うのか。
その割には至って、落ち伝いているカンクロウにサクラは眉を吊り上げた。
「とりあえず、一回帰ってみます!」
「おう」
 テマリさんありがとうございました! と告げ、バタバタと出て行くサクラの背中をテマリとカンクロウは見送った。

「我愛羅はどうしたんだ?」
 あったかい珈琲を飲みながらテマリが問えば、ああ。とカンクロウが苦笑いする。
「今日休みだったのに来てよー、鬼のように仕事しててな……」
「ああ……そういうことか」
 何となく察しが付いたテマリは穏やかに笑った。

「夫婦喧嘩は犬も食わないってねぇ」
「そういう事じゃん」
 笑いながらカンクロウは、肩を竦めた。


「我愛羅くん!」
 慌てて帰宅したサクラは大きな声で我愛羅の名を呼ぶが、返答が無い。
気配はあるのにどうしたのかと、玄関で靴を脱ぎ捨て家の中に上がる。
寝室に向かえば、寝ているのか倒れているのか分からぬ我愛羅が、ベットにうつ伏せになっていた。

「我愛羅くん! 大丈夫!?」
 肩を揺すり大丈夫かと声をかければ、我愛羅がパチリと瞼を開き、目の前に居るサクラを視界に入れる。
「サクラ……!」
 信じられないものを見たかのように、我愛羅は驚きサクラを抱き寄せた。
「どうしたのよ、まったく……」
 ベットの脇で膝立ちになったサクラはそっと我愛羅の背に手を回した。

「愛想を、尽かされたと思った……」
「……馬鹿ねぇ、ちょっと怒っただけじゃない」
 ぽんぽんと背中を軽く叩くサクラに、我愛羅はゆっくりと瞼を閉じる。
「サクラ、すまん」
 我愛羅の謝罪にサクラは首を横に振る。
「ううん、私こそごめんなさい。いつもありがとう」

 互いに額を合わせ笑い合う。
いつもありがとうの言葉と共に。



2015.我サク独り祭り
05. 日頃の感謝を込めて
06. 雨の休日の過ごし方