「そう言えば、最近サクラって子供達に人気だよな」
 何となく発したカンクロウの言葉に、我愛羅は手に持っていた筆をポキリと折ってしまった。


「サクラ先生ー」
「先生、今日は私にお勉強教えてくれるんだよね!」
「何言ってんだ! 俺と遊ぶんだよ!」
「男子は引っ込んでなさいよ」
「なんだと! 可愛くねぇ!」

 足元を囲まれ、数人の子供達がわらわらと駆け回るのにサクラは人差し指で額を押さえる。
「ほらー、アンタ達院内で走らないって言ったでしょう! 騒ぐなら中庭に行く!」
 サクラが中庭を指差したら、子供達が「きゃー!」と叫びながら一斉に走り出してしまう。

「あ、こら! 待ちなさい!」
 病院内を走る子供達を追いかけるサクラ。
それを鬼ごっこと思ったのか子供達は、きゃっきゃ! と騒ぎながら院内を走っていく。

「こらー!」
「先生が鬼だかんな!」
「捕まったら、怖いのよ!」
「サクラ先生のスパルタ授業が待ってるんだぜ!」
 バタバタと走る子供達が他の患者や医療忍者達に邪魔にならぬように、サクラは一人、また一人と捕まえ脇に抱えていく。

「……わあ、サクラさんまた子供達の相手してるの」
「そうみたい、凄く大変よね……」
 マツリに用事があって病院を訪ねにきていたユカタは、鬼の形相で小脇に子供達を抱えるサクラを見てヒクリと口元を動かす。
受付でマツリと話していたユカタは、あれ。と声を上げた。

「風影様じゃない」
「え!」

 いつの間にか院内に来ていた我愛羅が、サクラと子供達の前に立っていた。
何事かと思い様子を見ていたマツリとユカタは、お互い顔を見合わせる。

 サクラの腕からするりと抜けた子供達が中庭方向に向かい、その後を我愛羅が歩いて追う。
何か言いたげな表情をしていたサクラは少しだけ頬を膨らませていた。

「あらら、サクラさんお疲れ様です」
「ユカタちゃん!」
 久しぶり、元気にしてた? と笑うサクラにユカタは、はい。と返事をする。
「災難でしたね、子供達」
 院内で騒ぐ子供達の相手が大変だろう。そういう意味も込め話すと、受けに突っ伏してサクラは嘆いた。

「そう! 我愛羅くんに子供達を取られちゃったの!」
 え、と声を上げマツリはサクラを眺める。
「でも子供達にも我愛羅くん取られてどうすればいいかわかんない!!」
 どっちに嫉妬すればいいのよ! と嘆くサクラにマツリとユカタは眉を下げ苦笑いするしかなかった。



「いいか、サクラはオレのお嫁さんだ」
「でも風影様とサクラ先生が"りこん"したら先生フリーなんでしょ?」
「馬鹿ね、男と女はそんな簡単なもんじゃないのよ」
「お前に何が分かるんだよ……」

 中庭にて、風影と子供達の応酬は続いていた。



2015.我サク独り祭り
07. それでも溢れる独占欲
08. 途中まで一緒に