朝から体調が悪そうなサクラを家に残し、仕事に向かい、長引いた会議に少しばかり怒りを覚えた。
会議が長引いた割には、結局何も決定事項が成されなかったのだ。

 鍵を開け、玄関をくぐり感じたのはシンとした家の中。
流しを見れば乱雑に置かれた食器。
ダイニングしか灯りがついていない事に我愛羅はヒヤリとする。

 少し大きな足音を立て、寝室に向かえばベットの中でサクラが静かに眠っていた。
それに安堵の溜息を吐き忍びないと思いながらも、サクラの肩を揺すって起こす。

「サクラ、サクラ」
「ぅ、うう……ん」
 もぞりと動き瞼を開き、サクラはダルそうに我愛羅を見る。
「体調はどうだ?」
「……すこぶる悪い」
 うつ伏せになり、枕に顔を埋めるるサクラの頭を優しく撫でる。
「何か食べれそうか」
「たべたくない」
 うううと唸り首を振るサクラに、お粥はどうだと問えば、それならば食べられるかも知れぬとサクラは頷いた。

「我愛羅くん」
「どうした?」
 少し冷えた頬に手のひらを乗せれば、心地よさそうに目を瞑る。

「お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
 おかえりとただいま。行ってきますといってらっしゃい。
何があるか分からぬ世界の為、どんな事があっても、その言葉は言おうと二人で決めたのだ。

「あ、それと」
「それと?」
 パチッと瞼を開けたサクラは思い出したように我愛羅に告げる。

「梅干食べたい」
「……梅干」

 ベットの中で項垂れるサクラのため、我愛羅は梅干粥を作りサクラに食べさせたのだった。


 ***



「……妊娠してました」
「は?」
 リビングで新聞を読んでいた我愛羅は、思わず手から新聞を落とす。
体調が悪いと訴えた日から幾日か経ち、これはおかしいと検査をしたところ発覚した。

「男か、女か?」
「まだわかりません」
 我愛羅の瞳が爛々と輝くのを見てサクラはくすりと笑う。
「嬉しい?」
「当然だ」
 ぎゅっとサクラを大切に抱きしめた我愛羅の背にサクラはそっと自分の腕を回した。

「名前考えなければな」
「まだ、早いって」

 二人の喜ぶ声色が、穏やかに響いている。


2015.我サク独り祭り
09. 今日は僕が(私が)作るよ
10. この命ある限り