バアン!!!
火影の部屋で響いた音。
頑丈な机が大破し、大量に積み重ねられていた書類は宙を舞う。
その惨状にその場に居合わせた者達はひいいと声を震わせた。
「何の音ですか……あらら」
ガチャリと扉を開けたのは、はたけカカシ。
室内の現状にガシガシと後頭部をガシガシと掻いた。
「一体どうしたんですか。火影様」
火影様。
そう呼ばれたのは五代目火影である綱手。
睨み付けるようにカカシに視線を向ける綱手に、周りに居た中忍、上忍はビクリと肩が動いた。
「遅いぞ! カカシ」
「すみません」
素直に謝罪をするカカシにふーと大きく息を吐き、側近であるシズネに視線を配らせる。
コクリと頷いたシズネは室内に居る者達を確認した。
「皆さん緊急で集まってもらい、ありがとうございます。
先程、各隠れ里より密書が届きました。第四次忍界対戦後、各隠れ里人員不足の改善、復興に
尽力する中、新たな火種が発覚しつつあります」
シズネの言葉を静かに聴いていたシカマルは眉を吊り上げどう言う事かと問うた。
「一体なんすか。新たな火種って」
綱手があそこまで怒るほどだ。よっぽどのことに違いないと確信する。
「医療に携わる者達が連れ去られ、殺害されているとの報告があがっています」
その言葉に凍りつく室内。
「雲、霧、砂、岩それぞれで事件が起きていますが、犯人は特定も出来ておらず、医療に関わる者が減少しています」
シズネの説明に、ドカリと椅子に座り大きな息を吐いた綱手。
「医者を何だと思っている」
ギリギリと奥歯を噛む綱手にネジが問う。
「木の葉では報告が上がっていませんが……」
「ああ、確認している所だ。あらぬ疑いが掛けられているのもまた事実。
早急にこの件を解決しなければならぬ」
綱手の言葉にその場に居た、シカマル、チョウジ、元ガイ班、十班の忍はコクリと頷いた。
「どうされますか。何にしても情報が足りません。各隠れ里からの情報が欲しいところですが……」
カカシの言葉に「それなら」とシズネが巻物を広げようと手にした瞬間、
コンコン
聞こえたのは火影室を叩く音。
「なんだ、入れ」
ガチャリと扉が開き現れた人物は目を丸くして室内を見渡した。
「失礼します。あれ、皆どうしたの?」
手にバインダーを持ったのは山中いの。忍び装束ではなく病院勤務なのか、白衣を着ていた。
「いのじゃねーか」
「どうしたの?」
キバとチョウジの問いかけにえっと、と言葉を零したいのはシズネと綱手に視線を向ける。
「どうした。緊急か」
椅子に座っていた綱手はくるりと椅子を回し、いのを視界に捕らえた。
綱手の視線に促されるようにいのは此処に来た理由を思い出し、コクリと頷き綱手に問う。
「あ、すみませんお聞きしたいことがありまして……。今日、サクラって任務に出たりしてますか?」
落とされたいのの言葉に綱手は目を見開いた。
ザワザワと嫌な胸騒ぎが室内を包むのを感じ取りながらもいのは言葉を続けた。
「今日、病院勤務になっているんですけど来てなくて。もしかすると別件でなにか任務が入っていたり……」
「それは本当か!」
いのの言葉を遮って綱手はがたりと椅子から立ち上がる。
眉を吊り上げギリギリと奥歯を噛む綱手にビクリといのの肩が震えた。
「は、はい! 午前から病院勤務なんですがモエギにも確認したところ今日は姿を現してないそうで、家に行っても不在で……」
「シズネ、今すぐ暗部に知らせろ!」
「はい!」
綱手の指示を受けシズネはバタバタと足音を立て、火影室を急ぎ出て行く。
「サクラさん……大丈夫かな」
心配そうに呟いたのはヒナタ。
「……そう簡単にやられる奴じゃねえだろ」
「そうだ、ヒナタ。サクラは強い。何故なら五代目火影様の弟子でもある」
ヒナタの呟きに同じ班員であるキバとシノは言葉を掛ける。
「どういうこと……サクラがどうしたっていうのよ」
不安な瞳の色を見せたいのは、シカマルに説明を求めるように視線を向ける。
「めんどくせー事になりそうだ」
後頭部を掻きながらシカマルは顔を顰めた。
「火影様、どうなさいますか」
「カカシ、忍犬を使いサクラを探せ。情報が入り次第、シカマルを小隊長としネジとリーで任務に当たれ!」
「ハイ!」
綱手の指示に従い動き出す忍達。
皆が立ち去った室内を一瞥し、溜息を一つ。
里が一望出来るほどの窓から空を見れば、憎いほどに青く澄み切った空が広がっていた。
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