ジリジリと肌を焼き尽くすような日差しに手を翳し、空を仰ぎ見れば怖いほどの真っ青な空が広がっていた。
少し吹く生温い風が砂漠の砂の匂いを運んでくる。


 ここ、砂隠の里を太陽がジリジリと照らしていた。


 里の警護を言い渡されている中忍の男はこの仕事に誇りを持っていた。
憧れである最年少の風影に、通り掛かりではあったが「よろしく頼むぞ」と言われた言葉が警護という任務にやる気を起こさせていた。

「ん、先輩。あれ、なんですかね」
 里入り口で同じく警護に就いていた上忍に問いかける。

「あれは……」
 肉眼では見えにくいが、商人だろうか。
この照り付ける太陽の中、大荷物を砂漠を越えるためのラクダの背に乗せ砂隠れの里に向かってくるのが見えた。

 段々と近づいてきた人物は真っ黒なフードを頭から被っていた為、顔は見えなかった。

「まて」
「はい? なんでしょうか」
 聞こえてきたのは男の声。
ラクダを繋いでいる手綱を引き、ラクダの歩みを止めると背に乗せている大きな箱がゴトリと音を立てる。

「最近物騒なことが多くてな。悪いが里に入る全ての者の荷物検査をさせてもらっている」
 里の警護をしていた上忍は何処からかバインダーを取り出し紙に何かを書いているようだった。

「……まさか、何か怪しいものがあるとでも?」
「なにもなければ問題ないはずだ」

 じろりと睨むフードの男。
上忍の警護の男も眉間に皺を寄せ男を見た。

「見て分かるでしょう。これは商売道具ですよ。いろんな国を回ってましてね。
この箱や袋の中身は売り物や、旅をする為の必需品ですよ。……わざわざ調べる必要は無いでしょう」
 ラクダの体を触り男は言う。

「商売道具なら尚の事調べても何も問題はあるはずはないだろう? それともなにか、都合が悪いものでもあるとでも」
 上忍と男が睨みあう。
 
 ビュウウと一際強い砂嵐が舞った。

「何をしている」
「カンクロウ様!」

 隈取姿で現れたのは現風影の兄、傀儡使いのカンクロウ。
任務帰りで偶々通りかかったカンクロウだったが、自里の忍と見た事もない大荷物を持った
商人風の男がいがみ合っているのを目撃し、見かねて声をかけたのだ。

 今まで様子を見ていた中忍の男がカンクロウに耳打ちをし、状況を簡単に説明をする。

「おい、アンタ。どんな理由があれ里に入りたければ、検査を終わらせからだ。
例外は無いじゃん。最近人身売買だ、誘拐だと後を絶たないからな」
 カンクロウが顎を少し動かし忍に視線を送る。

「何をする!」
 男の声は無視をし、忍二人はラクダの背に乗せられていた大量の袋と人が入りそうな大きな木箱を引き摺り下ろす。
上忍の男は木箱の重さに違和感を覚え頑丈に縛られていたロープをクナイで切り裂いた。

「カンクロウ様!」
 上忍の男は信じられないものを見たと思いカンクロウの名を呼ぶ。

「……まさか」

 ヒクリと動いた口元。
カンクロウが見間違える筈も無かった。

「春野、サクラ」

 後にも先にも薄紅色をした髪の人物など見た事がなかったからだ。
カンクロウの額からじわりと汗が一滴流れて、落ちた。