「何故、サクラを狙ったものだと言い切れる」 
「男が死ぬ間際に発した言葉だ。『あの女さえ連れて行けば』多分男の言うあの女とはサクラの事、
連れて行けば、と言う言葉からその男もまた何者かの指示に従っていたと見える」
 手元の書類を流し読みしながら我愛羅は深い溜息を吐く。

「と言う事はまだ黒幕がいると言う事ですね」
「ああ、そういう事じゃん」
 サイの問いにカンクロウが頷き答える。それを見てサスケはもう一度我愛羅の視線を向けた。

「だが、結局はサクラがどこに居るかも、黒幕もどこに居るかもわかっていないんだろ」
 その言葉にコクリと頷いた我愛羅にサスケはチッと舌打ちをする。

「結局どこに……」
 行ったのかわからないのだろう。とサスケが発言しようとしたがそれは煩い騒ぎ声に遮られてしまった。
 
 コンコン

「我愛羅、客人だ」
「我愛羅ー! 久しぶりだな!!」
「我愛羅君! 僕が来たからにはもう安心ですよ!」
「ちょっとアンタ達煩い! 少しは静かに出来ないの!?」
 テマリに続いてわらわらと室内に入ってくるのは綱手の命で砂隠れにやってきたナルト、リーにいのの三人だった。

 その三人の煩さに我愛羅は思わず、額に腕を当て本日何度目か分からぬ溜息を吐出した。

「なんでお前達がここに居る」
 ナルト達が現れた事に不満なのかサスケは苦々しい表情をしながら言葉を吐く。

「あー? サクラちゃんが行方不明と聞いてよ! 居てもたってもいられなくなってきたんだってばよ!」
「そうですよ! サクラさんの身に危険が迫っているんですよ! 黙っていられないでしょう!」

 早々に存在感を主張する二人に「相変わらずだね、二人とも」とサイはにこやかな笑顔を向ける。

「と言うか、ナルト。お前達が来た所で状況は変わりはしねーんだよ。
サクラは今砂の忍が探してる、この環境に慣れてないお前達が何人来た所で無駄じゃん」
 木の葉の忍は相変わらず煩いな。とカンクロウは思いながらナルトに向けて言葉をかけた。

「へへーん、そうでもないんだってばよ! なあ、ゲジマユ! いの!」
「そうですよ! 綱手様がなにも無い状況で僕らを派遣するはずがありませんよ!」
 自慢げに腕を組むナルトとリーの発言に少し目を開いた我愛羅は、テマリとカンクロウに視線を送った。

「どういう事だい? 何か分かったのか?」
 我愛羅の視線を受け、頷いたテマリはナルト達に問う。

「あ、はい。これが綱手様から預かってきた巻物です。木の葉で調べた事が全て記されています」
 いのは大事に持っていた巻物をテマリに手渡すと「ふむ」と言いその巻物を確認して我愛羅に渡した。

「火影からで間違いない」
「ああ、確認する」

 しゅるりと巻物を開き綴られた文字を追う我愛羅の目は真剣だった。
綱手から我愛羅に当てられた内容は簡易的に纏められた、家紋の事、サクラの事、ご神木のことの三件だった。
人はどんな事を体験、経験しているか知らぬが、まさかサクラが過去に同じように行方不明になっているとは……と
内心思い、人は見かけによらぬな。と何時だって気丈に振舞うサクラしか知らぬ我愛羅は違う一面を見た気がした。

「テマリ、カンクロウ」
 我愛羅に名を呼ばれ二人は我愛羅を見た。

「砂隠れ近郊で大規模な崖崩れが起き、大名が巻き込まれたのはいつだ」
 その問いにテマリとカンクロウは顔を見合わせる。

「確かもう、十数年以上前の事だろう」
「ではその大名の遺体は回収されたか?」
「いや……出来なかったはずだ。切り立った谷の下に落ちたはずだ」
「ではもう一つ問う、その大名は何を秘密裏に運んでいた?」
 矢継ぎ早に問う我愛羅に若干驚きながらも、記憶を探り答えるテマリとカンクロウは、はたりと思う。

「なんだったか、迷信めいた物だろう。病気や怪我が治せると言った……」
「確か……万薬の木とかって言ってたな」

 ガタリ、と音を立て我愛羅は椅子から立ち上がる。

「それだ」
「何がだってばよ!?」

 突然の我愛羅の台詞に何の事だか意味が分からなかったナルトは声を上げた。

「サクラの居場所が分かったぞ」
「おいおい……だがあの谷は砂蟲なんて非じゃねーぞ。バケモンの巣窟だ」
 カンクロウは眉を吊り上げ我愛羅を見た。

「なんにしても、サクラが居る場所が分かったんだな」
「ああ、ここ以外に検討がつかん」
 大人しく会話を聞いていたサスケの問いに頷いた我愛羅。
 カンクロウはそれを見て「分かった。俺が案内しよう」と言うがそれは我愛羅に静止されてしまった。

 
「俺が行く」

 我愛羅の言葉にカンクロウが「はぁ?」と言うがジロリと睨まれ口を噤んだ。
「サクラをみすみす連れて行かれたのは失態だが……」
 そこまで言い室内にいる面子のぐるりと見て、息を吐いた。

「こいつ等だけで行かせると、里が壊れる……」
 嘆くように呟いた我愛羅の言葉に、テマリとカンクロウは「確かに」と声を合わせて言った。