ぐーっと体を伸ばし、心地良い布団から無理やり体を引っぺがしカーテンを開ければ眩しいほどの陽の光が入ってくる。

「うん! 今日もいい天気」

 気合を入れるように、にこりと笑えば春に咲き乱れる花と同じ髪が揺れた。





1.春、キラキラ輝いて
 long story [恋しりて愛求め]





「サックラちゃ〜ん!」

 病院の廊下、手を振りながら満面の笑みを向けるその姿を見て名前を呼ばれたサクラは振り返る。
名を呼んだ青年を見ながらまるで犬みたいだと内心思い、尻尾が見えそうでサクラは思わず笑みが出ていた。

「ナルト、病院の廊下で走らない」
「あ、ごめん。つい……」
 へらりと笑う男に反省しているのかと、ジトっとした視線を向ければもう一度「ごめん!」と両手を合わせて
謝るものだからサクラは溜息を吐きながらも、気をつけなさいよね。と言うだけに留まった。

「それよりもアンタまた来たの? いい加減にしてよ……」
「だってよーサクラちゃんにまた何か有ったらどーするんだってばよ!」
 少し興奮気味に話すナルトに、いい加減にしてくれと再度心の中で呟いた。

「あのね、何か有る時はあるの。無い時は無いの! 何か起こったらそのときはその時よ!!」
「そんな事言って前回攫われたのはサクラちゃんなんだぜ! あの時は偶々助かったからいいけど、今度も助かるとは……!!」
「あー! もう! また巻き込まれるみたいに言うのやめてくんない!? 大体アンタ何しに来たのよ此処に!」


 苛々する口調で返したことに悪い。と思いながらもサクラはうんざりしていた。

 役1ヶ月程前、事件に巻き込まれ行方不明となっていたサクラだったが、ナルト達木の葉の忍と砂隠の風影である我愛羅のお陰で救出されたのはまだ記憶に新しい。
幾日か砂隠で体を休め、護衛と称して我愛羅とテマリから送り届けられたサクラは綱手から熱い抱擁を受け、豊満な胸の弾力に押しつぶされそうになった。
綱手の様子からして皆に迷惑を掛けてしまったと思い謝罪を述べその件も全てそこで終わったのだ。

 だが、そんな気持ちを他所にサクラの周りをチョロチョロと行動するする人物達に、サクラが我慢できたのは三日までだった。
木の葉隠の里に帰ってきて四日目の朝。さて、今日も遅れた分の仕事を取り戻さないと。
親元を離れ一人暮らしをするサクラが玄関を開ければ、そこに居たのはナルトとサスケの姿。
 ヒクリと口元を動かしたサクラに気が付かない二人は「おはようだってばよ!」「よう、遅かったな」と四日目の朝もまったく同じ事を言われ堪忍袋が切れたのだ。

 心配を掛けたのは悪かった。悪かったと思っている。
だが此処まで周りをうろつかれていては息が詰まるし落ち着かない。
そう考えていたらいつの間にかナルトのみならず、サスケも殴り飛ばしていたのだから相当のストレスを与えられていたのであろう。
気絶した二人を近くで見ていたサイに回収してもらい、その日の朝、綱手に直談判に行ったのも鮮明に覚えているサクラは溜息を吐いた。


「本当、何しに来たの……」
「サクラちゃんと晩飯食った後家まで送っていこうと思って!」
 にこーっと笑うナルトに、サクラはふっと勝ち誇ったように笑う。

「残念だったわね、今日私は夜勤なのよ。だからアンタとはご飯も食べにいけないし、一緒に帰る事もできないのよ!」
「えええっ!!」
 そりゃないってばよ。と項垂れたナルトに、じゃあね! と手をヒラリと振りながらサクラは院内の廊下を足早に歩いていく。


 悪いとサクラは思うが、一人になりたい時だってあるのよ。
そう思いながら、鼻歌を歌っていた。