ズキリと痛むこめかみ。
ううーんと唸り声を上げ体を起こし一度大きな欠伸をする。
「やばい……頭痛い」
ベットの上で両手でこめかみを押さえたサクラは昨日飲みすぎてしまった。と痛む頭に後悔をしながらパチパチと瞬きを二回した。
「ふぁ……!」
思わず出てしまった声に慌てて口元を両手で押さえる。
比較的最近、同じような光景を目の当たりにした気がし、デジャブだ。と心の中で呟いた。
「ちょっと……我愛羅くん……」
一人用の狭いベットの上。大の大人が二人も寝ていれば窮屈だ。
いつかあった光景を思い出しながらサクラは隣で寝扱けている我愛羅の肩を揺する。
何故、我愛羅が隣で寝ているのか。
そんな事は簡単だ、サクラはよく思い出そうとしたがどうも昨日の記憶が曖昧だ。
要は飲みすぎて潰れたサクラを我愛羅が宿まで運んだという事。
そして疲れ果てた我愛羅もそのまま寝てしまったという事だ。
「ヤバイ……」
木の葉の里ならまだしも、ここは砂隠れ。
我愛羅が風影として生きる土地。
そんな土地で酔いつぶれた他里の、しかも女が風影に運ばれて尚且つ一夜を共にしたとバレてみろ。
間違いがあったとか無かったとか関係なくそのこと自体が大問題だ。
顔を青くし、はああと溜息を吐いたサクラを他所にガリガリと頭を掻き我愛羅が体を起こした。
「相変わらずの百面相だな」
「んな……! ことより!」
起き抜けに言われた言葉よりも先に、何故我愛羅が共に寝ているのかを問い詰める。
「運んでくれてありがたいけど、何で家に帰らなかったの!?」
「疲れたからそのまま寝た」
くぁっと欠伸をするが我愛羅に「そういう問題か!」とサクラは声を荒げた。
「大体! 砂隠れの人に見られたらどうするの?」
要らぬ噂が立てば我愛羅の立場や信用に関わる。
ジッと睨みつけるサクラに我愛羅は業とらしく少し大きく息を吐いた。
「言わせておけばよかろう」
「え……」
「事実かどうかなど噂をするやつ等には解らぬことだ」
そう言い放った我愛羅はベットから出ると、風呂を借りるぞと言いもう一度欠伸をする。
「でも、我愛羅くんの彼女とか、結婚相手とか見られたりしたら不味いんじゃない? 私だって変な事に巻き込まれたくないわよ」
サクラの台詞に我愛羅は出入り口でピタリと足を止め間の抜けた声を出した。
「そんなのはいない……」
「え!」
ぎゅっと眉間に皺を寄せた我愛羅を見てサクラは驚いた表情を見せた。
「居ないの!?」
「どうしていると思った……」
額を押さえた我愛羅にサクラは心底驚いて我愛羅に矢次に言葉を飛ばした。
「だ、だって風影だし! いい年齢だし、ナルトやサスケくんもお見合いとかの話きてるからてっきり我愛羅くんはもう婚約者とか居るのかと思ってた!」
ぐらりと頭が揺れる感覚に我愛羅は「お前もだろう」と言葉を返した。
「私? 私は居ないわよー!」
あっはは。と笑ったサクラに我愛羅は小さく息を吐いた。
「もし」
「ん?」
我愛羅の言葉にサクラは視線を上げる。
ゆらりと揺れた新緑のような瞳が優しい色をしていた。
「もし、そんな人物が居るなら『俺』を『俺』として見てくれる人物だ」
我愛羅の言葉にサクラは少し首を傾げた。
それを見ていた我愛羅は少しだけ薄く笑い風呂場へと向かっていった。
ベットの上で膝を抱え、口元に手を当て真剣な表情をしたサクラは我愛羅の言葉の意味がよくわからず考えていた。
「どういう意味かしら……?」
意味深な言葉だと思い考え付いた結果は、恋人はいないが好いている人が居るのではないかと言うこと。
にやりとサクラは笑う。
「我愛羅くんに恋バナ……あの我愛羅くんに恋バナ……!」
えー、誰かしら! 今や立派な医療忍者となったマツリか、もしくはマツリの同期のユタカかサリか。
いやいや、もしかすると大名の娘さんかもしれない! そう考えるだけでサクラは妙に楽しくなり、パタリと布団に体を預けた。
「えー気になるー。砂隠れに居る間にちょっと誰か知りたい!」
いのにいい土産話が出来たと喜ぶサクラは枕をぎゅっと掴み顔を埋める。
先ほどまで自分の隣で寝ていた我愛羅の匂いが少しだけ残っているような気がした。
いつか間近で感じたあの甘い砂の香りは一体誰を愛するのだろうか。
うふふ、と笑ったサクラだが心の奥の更に小さな部分が少しだけ、ほんの少しだけ鉛のように思く感じたのは気のせいだと首を振り瞼を閉じた。
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