「事が起こるとすれば皇后とその娘である姫君が祭りに顔を出す時が可能性が高い」
 砂隠れの執務室で文を見て我愛羅は判断した。

「何か分かったのか」
 テマリが問い、カンクロウが我愛羅を見れば今し方読み解いた文を机の上に置いた。

「直々の護衛依頼だ」
 我愛羅の返答にテマリとカンクロウの表情が引き締まる。





7:伝わる熱




 明日から行われる風の国伝統の祭り。
毎年都で開催されていた祭りは、今年は大名達の内々のいざこざで都ではなく砂隠れの隣街で開かれる。

「今年は出られないかと思ったが……」
 机の上に置かれた文を流し読みしテマリはポツリと呟いた。

「俺も思っていたんだがな……」
 大名が急死をしたのが二年前。丁度この祭りの期間だったと我愛羅は思い返す。
後に大名の妻が新たに夫を向かえ入れたと聞いたのが昨年。
十を超える前夫の娘である姫君と新たな夫の連れ後の息子との跡取りの話を耳にしたのが今年になって。
 今年は祭りに顔を出すのも難しいであろうと皇后からの話を聞いていた。

 それが突然、祭りが開催される前日になって顔を出すと文で寄越されたものだから我愛羅は頭が痛かった。

「顔を出すのはいつじゃん?」
 カンクロウが問えば我愛羅は声を出さず文の一文を指差した。
何処で誰が聞いているかも分からない。

 我愛羅が指した箇所を見てカンクロウはそうか。と頷いた。

「既に暗部を数名向かわせている、隣街の護衛はどうだ」
「ああ、舞台に出る傀儡部隊と上忍達を向かわせたが……お前はどうするんだ」
 我愛羅を見てカンクロウは聞けば、我愛羅は溜息を吐いた。

「行かねばなるまい」

 一度瞬きをして我愛羅は腕を組んで少しだけ目元を細くした。


「医忍を一人連れて行く」

 顔を上げたテマリは目を見開いた。


「サクラか……」
 テマリの言葉に我愛羅は無言で目を瞑った。

「あの子程の医療忍者は確かに砂隠れにはいない。だがサクラはあくまでも木の葉に要請を出した形でつれてきたんだ。
サクラの任務は病の原因解明と特効薬の製薬だ。それに連れて行かないと言ったのはお前だぞ……」
 睨みつける様なテマリの表情に我愛羅は瞼を持ち上げ見返した。

「……あくまで調査だ。病の原因解明になる可能性が高い」

 反論はさせない。と我愛羅の瞳がテマリを射抜けば、顔を顰めたテマリは机をバンッ! と叩いた。

「私は知らないからな! 何かあったら責任を取れよ!」

 そういい残し、執務室の扉をバタン! と大きな音を出して出て行ってしまった。
肩を竦めた我愛羅にカンクロウは苦笑いをして見せた。

「お前が守るつもりなんだろう」
「……無論だ」

 まぁ、守られるだけの女じゃないしな。カンクロウが笑いながら言えば我愛羅は言葉無く頷いた。