パチンとポーチのボタンを留め、手袋を嵌め、額宛をきゅっと締める。
よし。と呟いて気合を入れた。


 ぱたぱたと聞こえる足音。
くるりと振り返れば駆けてくる少年と男の子。
サクラは二人を見てにこりと微笑んだが、すぐに眉を吊り上げ寝巻きを着ていた少年の頬を軽く抓んだ。

「いててて! 何すんだよ!」
「あなたはまだ安静にしてないといけないでしょ!」

 院内のロビー。
少年二人とサクラのやりとりを見ていた患者や医者はにこやかに微笑む。
穏やかな空気が流れる中、見舞いに来ていた男の子が、そうだ! と声を上げた。

「あいつ目覚ましたんだよ!」
 男の子のその言葉に先日昏睡状態に陥った幼い少女を思い浮かべ、そう。と頷いた。
マツリが製薬した薬が効いたのか。副作用が無いかよく見てもらわないといけないな。
そう考えたところでサクラは少年の頭を軽く撫で笑い返す。

「お見舞いはいいけど静かにね」
「わかってるよ!」

 にーっと笑った二人にサクラも白い歯を見せて笑って見せた。



「サクラ」

 突如として背後から聞こえた声。
サクラは顔だけ振り向かせ、あれ? と疑問を浮かべる。

「風影様!」
「おはようございます!」

 ぺこりと頭を下げる少年と男の子二人に我愛羅は、ああ、おはよう。と言葉を返す。
その光景がなんとも不思議でサクラは少しだけ目尻を下げてクスリと笑うが、すぐさま、そうだ。と思い我愛羅の袖を引き、ひそりと問う。

「先に護衛に行ったんじゃなかったの?」
「ああ……」
 それならカンクロウに先に向かわせた。と言う我愛羅にサクラは目を丸くした。

「よかったの?」
「問題ない。どの道カンクロウが先に向かい予定だったんだ。後で向こうで落ち合う」
 それよりも時間だ。さっさと行くぞ。とサクラに告げさっさと歩く我愛羅の背を追いかける。

「サクラ姉ちゃん、仕事? 頑張ってね!」
「風影様いってらっしゃい!」
 歩いていく二人の背中に少年と男の子が声をかければサクラは振り返り手を振った。



「……まるで親子じゃないですか」
 その光景をひっそりと見ていたマツリは思わずぽつりと呟く。

「ああ、本当だな」
 同意したテマリは肩を震わせながら思わず笑ってしまう。

「まったく……さ、私達は私達で任されたことをしようか」
「はい!」

 テマリの呼びかけにマツリはぐっと握りこぶしを作り天井に掲げた。