「んー、いい天気ー!」

 ぐーっと伸びをして窓の外から外を眺めれば今日も憎い位カラリと晴れた空にサクラは視線を向ける。
軽くシャワーを浴びて、髪を乾かし忍装束に袖を通す。

「今日も頑張りますか」
 よし。と気合を入れ宿の鍵をガチャンと閉めてもう何度も足を運んだ街へと繰り出した。



***



「は……?」

 冷たい声色が室内の空気を凍らせる。
目の前の我愛羅の視線に、サクラは内心冷や汗を掻いていた。


 事件後、すぐさま収拾し何事もなかったかのように傀儡部隊による人形劇が公演された。
つい数時間前に事件が起こり騒いでいた人々も目の前で行われる迫力のある人形劇にただただ、感嘆する。
劇場内で公演が行われている間、テマリ率いる部隊が街中のウィルス駆除に当たっていた。
建物や植え込みなどの駆除は出来るがやはり人を診察するのは医者でないといけない。
 砂隠れの件と平行してサクラは医者として砂隠れの隣街で診察を命じられたのだ。

 テマリを護衛につけ、隣街に暫く住まい多くの民間人の診察を半分を終えたところで、
一時砂隠れにテマリと共に戻ってきたサクラの言葉に、我愛羅は誰が見ても分かるほど機嫌を損ねた。

「えっと……」
 うん、間違えた事は言っていないはずだ。サクラは頭の中で考えうんと頷いた。

「もうそろそろ事態も収容するので木の葉に帰る頃合を相談したいと……」
 若干脅えながら先ほど我愛羅に述べた台詞をもう一度言う。
その言葉に更に眉間に皺を寄せた我愛羅。
二人の様子を後ろで見ていたテマリは、しまったな。と内心思う。
事前にサクラから聞いていれば我愛羅にそれとなく伝えることもできたであろう。
だが突然砂隠れに一旦戻ると言ったサクラに何も疑いを持たず我愛羅の前に連れて来たのを失敗したな、と思いながら首筋を掻いた。


「そうだな、ある程度事態は落ち着いてきたしな」
「そうでしょう! だから綱手様にも連絡したいし……」
 いつ頃帰れるか確認をしたい。そうサクラが言えば、そんなに帰りたいのか。と我愛羅が問う。

「いや、帰りたいというか……元々今回の件で来たんだし……」
 サクラの返答に、それもそうだとテマリは後ろで聞いていて頷く。
腕を組んで我愛羅を見れば眉間に皺を寄せていたのに気がつきテマリは肩を竦めた。

「悪いが、こちらは全くと言っていいほど解決してないのでな。そう易々と帰す事はできん」

 言い捨てるように我愛羅は書類をまとめ椅子から立ち上がる。

「ちょ……我愛羅くん!」
「悪いがこれから上役達と会議だ。また今度話を聞こう」
「ちょっと……!」

 執務室から出て行く我愛羅を見送ればパタンと扉が閉まってしまう。

「もう……なんなのよ」
 濁して話を切り上げるなんてらしくない。
そう思い、腰に手を当てたサクラにテマリは苦笑いをした。

「サクラ、そんなに急く必要も無いだろう?」
「そうですけど……」

 急ぐ必要は全くと言っていいほどない。
ただ、サクラの気持ちが早く木の葉に帰りたいと声を上げているのだ。
これ以上ここに居れば未練が残る。帰りたくなくなる。
今ならまだ引き返せるのだとサクラは自分に言い聞かせていた。

「だったら観光も含めゆっくりしていけばいい。なんだかんだ言って我愛羅はアンタを帰したくないんだよ」
「そ、うでしょうか……」

 テマリの発言に少しだけ頬を染めてしまったサクラは視線を彷徨わせ床を見つめた。

「だったら嬉しいけど……」
 思わずぽつりと呟いてしまった言葉にテマリは、可愛いやつだな。と笑いながらサクラの頭を撫でていた。



 そんなやりとりがあったのが数日前。
砂隠れの隣街に戻ったサクラは、医者の人手が足りないためすぐさま現場に駆り出された。


 結局自分の気持ちにけじめがつけれずあやふやなまま、ただ時間だけが過ぎていく。