サラサラと舞う砂は風に流され空に舞う。
見上げた空は陽が暮れて、昼間起こった騒ぎなどまるで無かったかのように静かだった。


「……よぉ、こんな所に居たのか」

 里が一望できる見晴らし台。
静かに輝く星達の光をぼんやりと眺めていた我愛羅の元に、姿を見せたのはサスケだった。

「お前は、あの場に居なくてよかったのか」
「……今のオレには何も出来ん」

 手術が行われて早くも十時間。
すり減らされる神経に、溜まっていく心労。
見かねたカンクロウに、外の空気を吸ってこいと言われ、このときばかりは大人しく言う事を聞いたのだ。

 寒いくらい穏やかに吹く風。
胡坐を掻いて座っていた我愛羅の隣にサスケは腰を下ろす。
暫く二人の間に流れる無言の時間。
先にそれを破ったのは我愛羅だった。

「……お前達は」
「は?」

 突然の我愛羅の言葉にサスケは顔をあげる。
里が眠る時間帯だと言うのに、意外にも砂隠れは明かりが点いている建物が多い。
酒場なのか、果ては劇場か。
サスケが物珍しく眺めていた所に、我愛羅から声を掛けられたものだから思いの外返事は雑だったかもしれない。

「サクラを連れて行った上に、こんな目に遭わせたオレが憎いか」

 サスケの顔を見ずに、見晴らし台の上から我愛羅は自里を見下ろしている。
ガリガリと首の後ろを掻きながらサスケは「別に」と短く返答した。

「お前を恨むっていうことは、サクラを信じないってことだろ。
餓鬼じゃないんだ。アイツが選んだ道が間違ってるとは俺は思わねぇよ」

 信じると決めたのだ。
今で散々、心配掛けて、泣かしてきて。
それでも自分を見捨てることなく、叫び続けてきた彼女を。

「お前もそう思うだろ、ナルト」

 見晴らし台の手すりに腕を置き、サスケが名を呼べば天井からガタリと音が鳴る。

「……ぅるせぇ」

 ゴロリと寝転がり、空を眺めるナルトは輝く星を眺める。

(サクラちゃんが目覚ましたときに泣いたら……我愛羅を殴ろう。うん)

 ひっそりと心に誓うナルトの気持ちなんて、我愛羅もサスケも知らなかった。


 時間は流れる、ただゆっくりと。
願いを乗せて星は流れる。

 ただ、奇跡を信じて。



 まだ、言ってない事が沢山ある。
彼女に伝えなければいけないことがある。
どうか、どうかと、ただ願った。

 我愛羅の中に、一つ決意が生まれる。