チチチと聞こえるのは鳥の鳴き声。
自里と違い四季折々が感じられる木の葉の里。
今は命が芽吹き、新しい生活が始まる「春」である。
五代目火影である、綱手が引退し六代目には、はたけカカシがその座に着いた。
影が変わると何かと他里に出向く事も多くなる。
我愛羅の付き添いとして、テマリとカンクロウは共に木の葉に足を運んだ。同盟国とは言え、影を名乗る以上護衛は付き物だ。
とは言え、カンクロウ達にとって木の葉に来るのは今や一つの観光だ。
砂隠れの忍達から土産を期待されているのがその証拠である。
「ねっみ……」
くあっ、とまるで猫のように大きく口を開け欠伸をしたカンクロウは、木の葉から与えられた格式高い宿で暇を持て余していた。
テマリは木の葉のくの一達と買い物に出かけ、我愛羅に至ってはナルトやサスケ達と一緒に出かけてしまった。
別にカンクロウも木の葉の忍と共に出かけても良かったのだが何となく気が乗らなかったし、何より最近の激務続きで身体がきつかった。
それとなく気を使ったテマリと我愛羅は木の葉の忍と買い物と称し、カンクロウをのんびりさせる為に気を使ったのである。
そんな姉と弟のなんとなくの厚意を受け取って見たものの暇で仕方がない。
畳が心地よい和室。
窓際で胡坐を掻きぼんやりと目下にある木の葉の里を見下ろす。
行き交う人々がなんとも楽しそうで、平和だ。
「相変わらず平和じゃん……」
甘っちょろくて、ため息が出るほど穏やかで。
何よりも優しい。
瞬きをしたカンクロウが頬杖をし、窓の外をぼんやりと眺めていれば目の端に映る鮮やかな色に目を奪われた。
「あ……」
さらりと目の前を舞うのは桜の花弁。
飛んでいく先を見つめれば、そこには合流したのかテマリと我愛羅の姿。
そして木の葉の忍のナルトとサスケ、そしてサクラの姿があった。
何を揉めているかわわからないが、ナルトとサスケがサクラに追いかけられているようで、
それをおろおろとしながら見ている我愛羅に、笑ってみているテマリの姿。
騒ぎに駆けつけたのであろう、木の葉の奈良シカマルや犬塚キバ、油目シノなど、相変わらず煩い連中が集まっていた。
「本当、相変わらずだな……」
木の葉は何も変わらない。
初めて出会ったときから何も変わらない。
もう一度、欠伸を一つ。
ひらりひらりと舞う桜の花弁が、室内を鮮やかに染めていく。
3.呆れるほど鮮やかに、
→ 4.なみだを隠すように、