「ったく、サクラはいったいいつまで時間掛かってるのよ」
「あ、そう言えばあの人も居ないよね」

 トイレへと席を立ったサクラがいつまで経っても戻ってこず、痺れを切らしたいのが席を立つ。その言葉に辺りを見渡したヒナタが違和感に気がつき、顔をあげた。

「なーに、もしかして本当に?」

 眉を潜めて顎に腕を当てる。いのは目の前の寝扱けている男達に溜息を吐き、ガクリと項垂れる。

「それにしたって連絡のひとつぐらいよこすでしょー」

 傍に置いていたバックから携帯を取り出すが、メールも着信も入ってない。何かあったのだろうか。いのはそう考え個室を出るため障子を開けた。

「この状況どうするの…?」
「放って置きなさいー、店員さんに時間になったら起こしてもらえばいいのよ」

「会計はコッチで済ませればいいのよ」長い髪の毛をひらりと揺らしいのがヒールを履く。廊下を数歩歩いて会計を済ませるため店の出入り口の待合スペースに出れば、そこには見知った顔が居たのにいのは驚いた。

「あれ? 我愛羅くんこんな所で何してるの?」
「や、山中……!」

 心底驚いたような表情の我愛羅に、いのはビックリしてパチパチと瞬きを繰り返す。

「サクラの電話番号知らないか」
「へ!」

 いったいどうしたんだろうか。といのは状況が飲み込めず思わず声を上げてしまう。冷静なふりをしているが、少々必死な我愛羅にいのは珍しいと思わず感心してしまった。

「だから、無意味だって言ってるじゃない」

 見知らぬ女の声が聞こえ、いのとヒナタは顔を合わせ待合スペースの椅子に座る女を見た。

「誰ですか、アナタ」

 怪訝な表情で女を見たいの。女は足を組んで「我愛羅さんの彼女でーす」と笑った。

「我愛羅くんの彼女?」

 いのがじとりと視線を我愛羅に向ければ、首を横に振り「違う!」と声を出す。
「断じて違う」
「本当に?」

 再度確認すれば、我愛羅はコクコクと頷きいのに弁解をし、お前も分かっているだろう。といわんばかりの視線を向けた。

「はぁ……我愛羅くん。私ね、正直アナタが誰と付き合ってもいいと思ってるの。だってそれは個人の自由だし誰も口出し出来ないもの」
「ああ……」

 まるでいのにお説教をされるかのように我愛羅はガクリと首を下げる。それを見たいのは額を押さえ、小さく息を吐いた。

(サクラを煽るつもりで開いたの飲み会の近くに何で我愛羅くんがいるのか……)
 内心そう思ったいのは、それは言葉にせず一度咳払いをした。

「まあ……お互い、言葉が足りなかったのよ。先延ばしにしすぎたのよ」

 サクラは盲目になりすぎて事実が見えていないし、我愛羅は伝えたい想いをひた隠しにして。ずっと続いてきた変わらぬ平行線だ。

 静かに「そうだな」と言葉を漏らす我愛羅に申し訳ないなといのは思う。お節介かと思ったけれどいい加減二人が、大手を振ってお付き合いしてほしいと願ったのだ。

 静まり返る待合スペース。静寂を割くようにヒナタの不安そうな声が響いた。

「サクラさん出ないです……」

 携帯で呼び出しているが全く繋がらず、ヒナタは何かあったのかと心配そうにいのに視線を向ける。その視線にいのも自分の携帯を取り出してディスプレイを見たがやはりサクラからの連絡はなにも無い。
何かあったのか。そう思いいのもサクラに電話をかけようとした時に椅子に座っていた女が「だから無駄だって」と呆れたように笑った。

「なんでそんなことが言い切れるのよ」
 はっきりと言い切る女にいのが眉を吊り上げ詰め寄れば、女は肩を竦めて溜息を吐く。

「だってあの男、私達の界隈では有名よー? すぐ女の子に手を出しちゃうって。案外ああいう気が強そうな子ほど、押しに弱いから格好のターゲットよ。きっと今頃近くのホテルなんじゃなーい?」

 野暮なことはしないほうが良いわよ。とニヤニヤと笑った女に我愛羅やいのよりも先に反応したのはヒナタだった。

「私、サクラさんを探してきます!」
「ちょっと、ヒナタ!」

 今にも走り出して店を飛び出そうとするヒナタに慌てて、いのはレジで支払いを急いで済ます。待合スペースで騒ぐいのとヒナタの声にいったい何事だ。と個室から人が顔を覗かせる。

「おいおい、なに騒いでんだよ……よおー、ヒナタにいのじゃねーか。久々だなー」

 背広を手に持ち、キバは顔なじみのいのとヒナタを見つけ片手を上げて名前を呼ぶ。
「キバくん!」
「ちょっとキバ、合コンってどういうことよ!」
 いのに詰め寄られるが、キバも反論する。
「おめーらも合コンだろうが」

 睨み合う両者にヒナタがおろおろとしながらも「今はそんな事をしている場合じゃないよ」と仲裁に入る。
ヒナタの慌てように何かあったのか。と問えば、いのが掻い摘んで説明をした。


「我愛羅、どうすんだよ」

 ここ数年、我愛羅に好きな人が出来たんじゃないかとナルト達と話したことをキバは思い出す。それがまさかサクラだったとは思いもよらず、キバは驚くが、コレはナルト達にいい土産話が出来たと内心喜んだ。
今まで鉢合わせなかったのが不思議だ。故意に会わないようにしていたのか定かではないが、なんにしてもナルトとサスケの驚く顔が見て取れる。

 もう一度「どうするんだ」とキバが問えば我愛羅の瞳は強く意思を物語っていた。



07. 先延ばしにしてきた報い
 → 08. これが最後の選択肢