そよそよと心地良い風に靡く髪。
窓を開けて外を見ていれば突然、額を突かれたので何事かと思い顔をあげると、目の前ではニコリと笑いながらも怒りに満ちた表情のいのが居た。



「まーったく、あんた最近おかしいわよ」
「そ、うかしら……」

 ギクリと身体を震わせ、そんなこと無いと言う素振りでサクラは目の前の書類に視線を戻したが、いのからの視線がチクチク刺さるようでいい心地はしない。

「ずーっと上の空。仕事はきちんとしてるけど、気と抜いた時にぼんやりしてるもの」

 まさに正論過ぎてぐうの音もでないサクラは苦笑いを見せるしかない。

「いつからか気が付いてる?」
「へ?」

 あんた自分がぼんやりしてるのいつからか知ってる?
改めて分かりやすく言われ、じわりと額に汗が出る。誤魔化せるとは思っていないが「さぁ」と注げて止まっていた手を動かした。

「砂隠れから帰ってきてからずーっと。砂隠れの患者を一人つれて帰ってきたことを懸念してるのかと思えばそうでもないし。サクラ、あんたどんな表情してるか気づいてる?」
「……そんなに変な顔してる?」

 思わず両頬を押さえ、不安そうな表情になるサクラに、うーん。と唸り「どっちかと言うと、恋してる表情」とまるで悪戯が成功した時みたいにいのはにやりと笑った。

「いやいやいや……」

 もう一度、いやいやいや! と発するサクラだが、まるで林檎のように頬を赤く染めていた。

「まあ、いいんだけどさー」

 その様子じゃ、まだ付き合ってなさそうだし。秘かにそう感じたいのは頬杖をしながら、ころころと表情が変わるサクラを見て、ふふふ。と声を漏らして笑っていた。



 ***


「我愛羅、木の葉から招致の書類がきてるぞ」
「なんだ」

 飛んできた高にくくりつけられた書類を開いたテマリは中を確認し、我愛羅に手渡した。
それを受け取り、中を読み進める我愛羅は微かに笑った。

「木の葉に、テーマパークが出来たらしいぞ」
「あー……確かサクラもそんな事言ってたな」

 遠征期間を追え、数週間前に木の葉に帰ったサクラを思い出したテマリは、楽しみにしていると言っていたのを思い浮かべる。

「行くか?」
「折角、ナルトからきてるんだ断る必要も無いだろう」

 それに。とナルトからの招致との書類とは別に、メモ書きされた伝言が入っていた。

"彼女とか連れて遊びにこいってばよ!"

 いい機会だと我愛羅は笑う。
結局砂隠れに居る残りの期間、逃げに逃げまくって、木の葉に帰る時、挨拶も無しに帰ったサクラをどうしてやろうかと考えていた所に降ってわいたチャンス。
これを利用しない手は無いな、と上機嫌に招致の書類に返答を書き進めていく。

 そんな我愛羅の姿に姉であるテマリは、あーあ。と思ってしまった。今現在ここには居ないサクラに「すまん。大人しく食べられてくれ」と手を合わせていた。





「くしゅっ!」

 ずずっと鼻をすするサクラ首を傾げ「風邪かな?」と思うが体調に異変が無いことに、ただのくしゃみか。とぐーっと背筋を伸ばす。だが、何故だか少し寒気がするので今日は早々に家に帰り暖かくして寝ようと考える。


 サクラの平和な日常が壊れるまで、もう少し。


 09. 相槌すらも特別な日々
 → 10. さて、いつ伝えよう?