幸せというものを考える。
 誰かを好きになって、仲間と一緒に修行をする。

 師である先生に認められ、立派な忍になりたい。
 もし、叶うのならば、彼女に認められたいという事。

 僕の目に狂いはなかった。
 彼女は強くて優しくて仲間を大切に想う人だ。
 そんな事をぼんやりと、診察室の前で考えていた。

「次の方どうぞー」

 聞こえた声に、胸の奥がそわそわするのを感じた。




「はい、終わりです!」
 にこりと笑顔で目の前の人物に言ったのは、本日病院勤務の春野サクラ。
「すみません、毎回ご迷惑おかけして」
 照れ臭そうに頬を少し掻きながらサクラに答えたのはロック・リー。
「いいえ、いいんですけど、あまり無茶しないでくださいね。最近リーさん怪我が多いみたいですし」
 手元の資料を見て、リーに少しばかり注意を促す。
「すみません、ご心配おかけして」
 面目ないとガクリと項垂れるリーにサクラは慌てた。
「あ、いや、テンテンさんやネジさんも心配していましたし!」
 胸元辺りで両手を振りながら慌ててたサクラの手が止まった。

 コンコン。

 扉をノックする音。
 緊急の用事かと思いサクラは返事をする。
「はい、どうぞ」

 ガチャリ。
 音を立て開かれた扉から現れたのはリーと同じ班員のテンテンの姿。
「悪いわね、サクラ。あ、リーも丁度よかった」
「テンテン、どうしたんですか」
 椅子から立ち上がりリーはテンテンに問う。

「綱手様から至急、サクラとリーを呼んできてって言われたのよ」
「緊急ね」
「わかりました、直ぐに行きます」

 リーには先に綱手の元に向かってもらい、診察を交代してもらう後輩の医療忍者を
探したサクラは帽子だけ脱いで、白衣のまま綱手の元へ向かった。




「合同任務?」
 今し方聞いた言葉をオウムのように繰り返す。
「ああ、先程シカマル達にも話はしたんだが。砂と木の葉の国境にある小さな小国。
そこの大名の娘が連れ攫われたという事だ。砂、木の葉平等を期す為、両隠れ里に依頼があった」
 執務室内。
 そこに居たのはシカマルとネジ。リーにサクラ。
綱手は椅子に座ったまま、机に肘を突き手を口元で交差させた。

「ただ、一つ問題なのは大名の娘を連れ立った集団の数が多い事。
依頼人と砂から貰った資料では敵の数は役、百。どうも抜け忍で構成されているようで
中にはビンゴブックに載っている手練も居るんだが……」
「どうしました」
 資料を見ていた綱手にサクラが聞く。
「いや、なんでもない。集団は小国から少し離れた廃墟を拠点とし、そこに娘を連れ去ったという事だ。
お前達の任務は、娘の奪還及び集団の壊滅。以上だ」
 資料を机に伏せ綱手は目の前に立つ四人に告げる。

「作戦、及び班構成はシカマルの指示に従い行動する事」
「はい」
「了解しました!」
 綱手の指示に返事をしたサクラとリー。
 シカマルは面倒くさそうに忍のリストを見ていた。



「それで、どうするんですかシカマル君!」
 火影室から退出し、作戦を練るために会議室へ移動し開口一番にリーが我愛羅に問う。
「もう考えてる。今回は三班に分かれて行動する」
「三班?」
 シカマルの言葉にネジが繰り返した。

「ああ、作戦は簡単だ。救出部隊、情報部隊、撹乱部隊に分ける」
 シカマルはそう言いながら会議室の机に一つの巻物を広げた。
「これは……」
「敵が占拠している廃墟のまで地図だ。切り立った岩壁の中に位置している。
おそらく敵も救助隊が来る事は百も承知だろうよ。待ち伏せされている可能性は十分にある。
まず、南側から撹乱部隊として、ネジを隊長に、キバ、砂のマツリとテマリに突入してもらう。
ネジ班は主に撹乱、中距離サポートが主だ
 地図を指差しながら突入経路を追う。ネジもコクリと頷いた。
「北側から俺を隊長に情報部隊、いの、シノに砂のカンクロウ。敵の情報収集、情報操作を。
そして、我愛羅率いる、サクラ、リーは西側の厚い壁岩を越えて、人質の奪還。
先に偵察に出したサイからの情報だと廃墟の西側、中央三階。ここに人質が居る可能性が高いとみられている」
 シカマルの作戦を頭に入れ頷いたサクラとネジ。

「我愛羅君と同じ班ですか!」
 燃えてきました! と拳を突き上げるリーを見てシカマルはまた一つ溜息を。

「リー、任務だぞ。我愛羅に気を取られていると惨事になるぞ」
「わかってますよ。ヘマはしません!」
 同じスリーマンセルで行動を共にするネジは、リーの直ぐ熱くなる性格に注意を促す。

「サクラ、我愛羅とリーのサポートと大名の娘のケアを頼むぜ」
「ええ、わかったわ」

「サクラさん!」

 突然サクラの腕を取り、リーがキラキラと瞳を輝かせていた。
「同じチームですね! サクラさんは僕が護りますから、一緒に頑張りましょう!」
「え、ええ……」

 突然の事に、ひくりと口元を歪ませたサクラ。
 ネジとシカマルは大丈夫だろうか、と。一抹の不安が過ぎった。





1.永遠の時を、(祈る)




 ずっとではないけれど。
貴女が大切だと思える人が、貴女が愛する人が出てくるまで護り続けたいと思う。
 願わくば、それが僕であればいいのだけれど。